病気や災害、自死などで親を失った高校生を支える「あしなが高校奨学金」がピンチだ。今年度、三重県では給付の予約を申請した25人のうち過去最多の12人が奨学生に採用されなかった。深刻な生活苦を背景に、申請者が増え、奨学資金が追いついていないという。
一般財団法人あしなが育英会が全国で運営する「あしなが高校奨学金」は、高校生に卒業するまで毎月一律3万円ずつ給付するというもの。
これまでは無利子貸与と給付を組み合わせて公立の生徒に毎月4万5千円、私立の生徒に5万円を渡していたが、返済の不安をなくそうと2023年度から制度が変わり、給付のみとなった。
高校進学を前に全国で奨学金を予約申請したのは22年度で1215人で、奨学生に採用されたのは1079人(採用率88・8%)だった。ところが23年度は申請1328人に対して採用668人(同50・3%)。24年度は申請は1800人に急増、採用は815人(同45・3%)にとどまり、過去最多の985人が奨学金を受け取れなかった。
三重県でも22年度は申請9人のうち採用は8人(同88・9%)だったが、23年度は申請19人に対して採用9人(同47・4%)、24年度は申請25人に対して採用13人(同52・0%)にとどまった。
高校在学中の申請を合わせても、三重県では22年度は申請18人に対して12人が採用(同66・7%)されたが、23年度は申請35人に対して採用されたのは14人(同40・0%)だけだった。
あしなが育英会東海エリア担当の安川憂さんによれば、制度の変更で支援を申請しやすくなり認知もされるようになった一方で、申請者全体の困窮状態が続いているという。「奨学金のニーズは高まっている。コロナ禍が明けたとはいえ、物価高の影響などで遺児家庭は苦しい生活から抜け出せていない」
奨学金知り「一気に未来が明るく開けた」
伊勢市の立花優里さん(19)も、あしなが高校奨学金を受け取った1人だ。5歳の時に父がくも膜下出血で亡くなり、母も病気で思うように働けず、進学は制服代や学費を考えると経済的な不安があった。中学の担任教師から奨学金のことを聞き、一気に未来が明るく開けたという。
いま、高校を卒業し、夢だったペットの美容師・トリマーになるため名古屋の専門学校に通う。友人とのつきあいや実習などで毎日が充実しているという。「経済的な事情で夢をあきらめてしまうことは悲しいこと。そういう人が減るよう私も募金活動などで応援したい」
あしなが学生募金事務局は毎年春と秋、全国約150カ所で奨学生らによる街頭募金を実施し、奨学金などの支援に役立てている。三重県では昨年秋には約154万円集まった。
今月20日から全国で街頭募金が始まる。県内では近鉄四日市駅のふれあいモールで20、27、28日の正午~午後5時、津駅西口で21日正午~午後4時半、伊勢市の五十鈴川郵便局前で20日正午~午後4時。問い合わせは育英会(03・3221・0888)へ。(高田誠)
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