10月に自民党本部と首相官邸が襲撃された事件で、警視庁公安部は公務執行妨害容疑で現行犯逮捕した埼玉県川口市差間の職業不詳、臼田敦伸容疑者(49)を、火炎瓶処罰法違反の疑いで、8日にも再逮捕する方針を固めた。捜査関係者への取材で分かった。

◆「危険」「ワーニング」スピーカーで流しながら党本部に接近

 再逮捕容疑では、10月19日午前5時45分ごろ、東京都千代田区永田町の自民党本部の正門前で、党本部に向けて火炎瓶を5本程度投げたとされる。公安部の調べに、黙秘を続けている。

車が突っ込み騒然とする首相官邸前=10月19日、東京・永田町で(河口貞史撮影)

 臼田容疑者は前日夜に軽ワゴン車で自宅を出発。事件直前には「危険」「ワーニング」などとスピーカーで流しながら党本部に接近。停車し火炎瓶を投げた後、車で逃走した。約600メートル離れた首相官邸前の防護柵に突入して停車後、発炎筒などを投げ付け、車内に火を付けた。警察官に銃を向けられて投降し、現行犯逮捕された。  党本部前で警戒中の機動隊員3人が煙を吸うなどし、喉に軽いけがを負った。車内からはガソリン入りのポリタンク(容量18リットル)16個やカセットコンロ用ガスボンベが見つかっている。  臼田容疑者のものとみられるX(旧ツイッター)には、「暴れる力で社会を変えよう」「選挙供託金制度を廃止しろ」などの書き込みがあった。公安部が動機を調べている。 

◆正体不明の液体も散布…警官も「通常装備では容易に近づけない」

 事件は、政治の中枢施設が立て続けに襲われ、容疑者を取り押さえるまでに10分弱を要した。警視庁幹部は「重装備の容疑者がどんな行動に出るか分からない中、難しい対応を迫られた」と話す。  自民党本部、首相官邸とも、当時対応したのは日常の警備に当たる警察官で、不審者の侵入を防ぐことなどが任務。臼田容疑者は党本部前ではガスマスクに防護服姿で、正体不明の液体も散布し、「取り押さえようにも、通常装備では容易に近づけない」(幹部)状況だった。容疑者は党本部から官邸方向に向かったため、すぐに無線で官邸の警備担当に情報共有し、警戒の準備を急いだという。  幹部は「侵入はさせず、人的被害も最小限に抑えることはできた」としつつも「刃物や爆弾の使用など、今後ともあらゆる想定パターンで訓練を徹底し、警備体制も不断の見直しを続けていく」と強調した。(小倉貞俊)


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