ロシアによるウクライナ侵攻で燃料価格が高騰したことを受けて、政府は、電気料金とガス料金の高騰を抑えるため4兆円余りを投じて補助金事業を行い、このうちおよそ3兆円分で、大手広告会社「博報堂」が、所管する資源エネルギー庁と小売業者の間に入って補助金を交付する事務局業務を担いました。
319億円余りの支出が予定されている博報堂の事務費について会計検査院が調べたところ、およそ7割の227億円余りが子会社など8社への委託費でした。
この子会社は、委託費のおよそ8割にあたる186億円余りに相当する業務を自社の子会社など5社に再委託し、再委託分の8割余りを受注した会社は、さらに2つの会社に業務の一部を再々委託していました。
事業の募集要領で、業務委託費が50%を超える場合は、その理由を資源エネルギー庁に説明しなければならないとされていましたが、博報堂が提出した理由書には委託や再委託が必要な理由が具体的に書かれていませんでした。
また、資源エネルギー庁がこうした委託や再委託を問題ないと判断した経緯の記録も、残っていませんでした。
資源エネルギー庁は「事後検証のため部内判断の記録を残すことは重要なので、今後手続きを整えたい」としています。
博報堂はNHKの取材に対し「受託業務については、守秘義務があるので答えられない」としています。
識者「分析対策なければ同じ事が繰り返される」
国の事業の外部委託は、緊急事態に大規模な予算を処理しなければならない場合によく用いられますが、博報堂が事務局業務を担った節電促進支援の事業やガソリン価格を抑える補助金事業のほか、新型コロナの経済対策として国が支給した持続化給付金など別の事務局が担ったケースでも、これまでさまざまな問題が指摘されてきました。
またしても補助金事業の事務局をめぐる問題が明らかになったことについて、国の会計実務に詳しい元会計検査院局長の有川博さんは「民間任せにせず、問題が起きた原因をしっかり分析して対策を立てないかぎり、同じ事が繰り返される。会計検査院のような外部機関がもぐらたたきのように指摘するのではなく、行政機関がみずから公正性を確保し全体を設計する気構えで取り組まなければならない」と指摘しています。
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