東京出入国在留管理局(東京入管)が、収容している日本育ちの20歳の外国籍女性を、8日にも強制送還する。女性は所持金もない上に母国に身寄りもなく、通常は国際機関が提供する帰国後の生活支援サービスを受けることができるが、「支援なし」での帰国となる。支援者や識者からは、入管の対応は「人道的な配慮に欠ける」との批判が出ている。

◆「わたしはにんげんだよ」日記に悲痛な声

 支援者らによると、女性はブラジルの施設で孤児として育ったが、日系人夫婦の養子になり、12歳だった2016年に一家で来日。女性の在留資格は「留学」で、高校を卒業したものの、夫婦と疎遠になり、専門学校在学中にうつ病も発症。学校の出席日数が足りなくなり、在留資格を失い8月から収容されている。女性は強制退去も命じられ、先週、帰国に同意した。

「わたしはにんげんだよ」「犬ではありません」…20歳の女性が東京入管の収容施設でつづっている日記。収容生活の苦しさがなまなましくつづってある(支援者提供)

 こうしたケースでは、国連の関連機関である国際移住機関(IOM)から、帰国後の住居探しや家賃の援助、職業訓練などの支援を受けられる。しかし、女性は「入管に、IOMの支援を受けると二度と日本に入国できなくなると言われた」といい、支援を断ったという。

20歳の女性が収容所内で書いている日記。ご飯の冷たさや味のまずさに苦しんでいることが書かれている。(支援者提供)

 IOM駐日事務所の担当者は「支援を得たから再入国が不利になることはない」と説明。支援者らは、入管が女性を早く帰国させようと虚偽の説明をしたとみて問題視しているほか、病気をきっかけに在留資格を取り消した対応も批判している。入管庁は「個別の件には答えられない」としている。  入管行政に詳しい駒井知会弁護士は「すぐに在留資格をはく奪した入管の対応はあまりに冷酷。帰国後の生活への配慮も足りず、とにかく早く帰国させるという目的ばかりが優先され、一人の若者の人生に考えが及んでいない」と一連の対応を疑問視している。(池尾伸一) 

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