ホールでオーケストラの授業に臨む芸高の生徒たち=いずれも台東区で
◆教室には五線譜の黒板が常備
生徒は各学年約40人。3学年の教室が1フロアに並ぶ。教室には五線譜の黒板を常備し、「ピアノ初見」「室内楽」など専門的な授業が組み込まれている。黒板には五線譜も
廊下にはオーケストラの演奏が響いていた。ビゼーの名曲「アルルの女」だ。見事に調和した弦楽器の調べに、流麗な管楽器の響きが実に心地良い。プロが手本を示しているのか? いや、ホールで練習していたのは生徒だった。卒業生でフルート専攻だった大平記子(おおだいら・のりこ)副校長(51)は「在校生の技術はほぼプロ並み」と自信をみせる。◆芸大に進む優遇措置は無し、それでも驚異の進学率
専門的な授業が組み込まれた時間割
そもそもは、音楽の早期専門教育への機運が高まった1954年に御茶ノ水に創設され、作曲、ピアノ、弦楽器、管打楽器の専攻で始まった。95年に現在地に移転し、その後に箏曲(そうきょく)や尺八などの邦楽専攻も追加。入試では一般科目もあるが実技が重視され、一説には「15歳で、芸大に入れるくらいの技量が必要」とも。 卒業後は海外へ行ったり、別の道へ進む人以外の9割ほどが芸大音楽学部に進学する。付属高校でも入試に優遇措置はないことを思えば、驚くべき進学率だ。◆「周りがすごすぎる」と悩む生徒に「全員そう思っているんだよ」
卒業生でバイオリニストのNAOTOさん(左)と大平記子副校長
生徒は全国からやって来る。卒業生で、ポップスを中心に活躍するバイオリニストのNAOTOさん(51)は大阪から単身上京し、「学食も寮もなくてきつかったが、一生の友人ができた」と振り返る。 幼い頃から子どもオーケストラに参加していたが、「自分が引っ張らないと演奏が成り立たないこともあった」。芸高に入って「皆と演奏することがこんなに負担が軽く、気持ちいいんだと初めて感じた」。 大平さんが「『周りがすごすぎる』と悩む生徒が多いが、『全員そう思っているんだよ』と慰めている」と明かす特殊な環境。「努力していない子はいない。いろいろなものを犠牲にして頑張ってきた秀才の集まり」とNAOTOさん。そんな同窓生の絆は強い。◆多彩な卒業生、周年記念コンサートで一堂に
芸高の正門
恒例の周年記念のコンサートも今回は、NAOTOさんが大平さんと同級生だった縁で、今までにない試みが生まれた。芸高出身者によるポップスコンサートだ。NAOTOさんは「(クラシック)じゃない方に光を当てた」と笑う。 NAOTOさんのほか、派手なパフォーマンスで知られたインストバンド「G―クレフ」のメンバーだった榊原大さん(ピアノ)と弦一徹さん(バイオリン)、ジャズを中心に活躍する中川英二郎さん(トロンボーン)、バンドやライブサポート、オーケストラでも活動する山崎千裕(ちひろ)さん(トランペット)が集結。これだけの面々がそろったのは「芸高のコンサートだから」(NAOTOさん)。大平さんは「多彩な卒業生の存在を、在校生も含めて広く伝えたい。裾野の広がりが頂上の高まりにつながるはず」と期待を寄せる。 ◇ ◇◆70周年記念コンサート、現役生の記念演奏会など開催
70周年記念のポップスコンサートは12月1日午後2時から、東京芸術大奏楽堂で。問い合わせはMitt=電03(6265)3201=へ。 このほか、11月9日午後2時から同所で現役生による記念演奏会、17日午後4時から東京芸術大第6ホールで邦楽専攻卒業生、午後6時半から旧東京音楽学校奏楽堂で弦楽器、管打楽器の卒業生によるスペシャルオーケストラ=指揮は同窓会長の野平(のだいら)一郎さん=のコンサートを開催。詳細は特設サイトへ。 ◆文・清水祐樹/写真・石橋克郎 ◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へメールでお願いします。1学年1クラスで、3学年の教室が1フロアに並ぶ
琴などが保管されている邦楽室
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