大正から昭和にかけて使われていたガラス製の薬瓶を集めている男性が富山市にいる。製薬業の集積地として有名な富山県は、薬を入れる瓶が盛んに製造されてきた歴史があり、コレクションは約600本に上る。「色や形、気泡の有無など一つとして同じものがない。当時のおおらかさや温かさを感じる」と魅力を語る。(共同通信=吉永美咲)
「富山県の薬関連の瓶は一番多く持っている自負がある」と話すのは丸藤裕貴さん(41)。インテリアが好きで、古道具を収集していた11年前、瓶コレクターの存在を知り、戦前に作られた瓶を集めるように。薬瓶は県内の製薬会社名が書かれた約200種類を所有。薬以外も合わせると約4千本に達する。
色はコバルトブルーやあめ色で、腹痛や歯痛などに効き、当時は「万能薬」とされた薬や、目薬が入っていた瓶が多い。職人が手作業で作っていたため、胴や口の形、気泡の有無にまでばらつきが見られる。
瓶は主にネットオークションで購入する。全国の収集家と交換したり、売薬業に携わっていた家から譲ってもらったりすることもある。
収集するうち、丸藤さんは売薬関連の道具や資料にも関心が広がった。県内の有名企業には、元は薬種商だった会社が多く、県の発展と薬には深いつながりがあると気付いた。「富山県に伝わる売薬とガラス製造技術が融合し、形になったものが薬瓶。忘れ去られているのは寂しい」と話す。
県内の博物館などに薬瓶はほとんど収蔵されておらず、いずれ展示の機会を持ちたいと考えている。丸藤さんは「収集品の展示や1冊の資料にまとめるなど、より多くの人の目に触れるような状態にしたい」と力を込めた。
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