◆特例適用を「厳格にするのは相当ではない」と初めて判断
第1小法廷は「多様な人材の受け入れを図り、大学等の教育研究の進展に寄与する」という任期法の目的を踏まえると、特例の趣旨は「教員の任期や雇用について、大学の実情を踏まえた判断の尊重」にあり、特例が適用される職に当たるかの判断を「殊更厳格にするのは相当でない」との初めての判断を示した。 その上で、介護福祉士養成課程は、現場実習など実務経験を生かした教育研究が行われており「教員の流動性を高めるなど、最新の実務経験や知見を不断に取り入れることが望ましい面」があり、特例が適用される職に当たると判断した。 一、二審判決によると、女性は2013年4月に専任講師となり、2018年11月に無期転換を申し入れた。大学側は特例を理由に応じず、2019年3月に雇い止めされた。一審大阪地裁は女性の訴えを棄却したが、二審大阪高裁は、特例が適用される職に当たらないとし、女性逆転勝訴の判決を言い渡していた。◇ ◇
◆原告弁護団「大学側にあまりに有利な解釈」
最高裁判決を受け、原告と弁護団は東京都内で記者会見を開き、「特例の恣意(しい)的な運用を許容し、有期契約の大学教員の立場を不安なままにとどめる点で、極めて不当だ」とする抗議声明を発表した。最高裁判決後、記者会見する元講師の女性=31日、東京都千代田区で
原告の女性は「非常勤を含めた多くの有期雇用の大学教員は、10年間も不安定な雇用が続き、そこからもどうなるか分からない」と現場に不安が広がっている実態を指摘。「学生たちと落ち着いて研究などができる環境にしていかないといけない」と教育機関での安定した雇用の重要性を強調した。 最高裁は特例が適用される職かどうかの判断について、「殊更厳格にするのは相当でない」とした。労働法に詳しい佐々木亮弁護士は本紙の取材に「大学側にあまりにも有利な解釈。本来は5年で無期転換の権利が与えられるのに、大学教員なら誰でも彼でも10年延長の特例を理由に無期転換の対象ではない、とされかねない」と懸念する。 この特例を理由に大学側が教員を雇い止めし、訴訟に至るケースは慶応大や東海大、信州大などでも起きている。佐々木弁護士は「最高裁の判断に従えば、広い範囲で特例が適用されることになり、他の訴訟にも影響するだろう」と話した。(三宅千智) 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。