東京都大田区で2022年、メタノールを使って妻を中毒死させたとして、殺人罪に問われた製薬大手「第一三共」元社員、吉田佳右被告(42)の裁判員裁判の判決が30日、東京地裁であった。坂田威一郎裁判長は「他の殺害方法と比較して発覚しにくく、高度の計画性があり冷酷だ」として懲役16年(求刑懲役18年)を言い渡した。
坂田裁判長は、吉田被告は仕事で日常的にメタノールを扱っており、「入手は容易だった」と指摘。動機について、家庭内別居状態になるほど夫婦関係が悪化していたため、「妻に強い不満を募らせて殺害しても不自然とは言えない」と述べた。
妻が普段飲んでいた焼酎パックの外側に残っていた白濁痕については、検察側の再現実験の信用性を認め、「メタノールによって生じた可能性が相当程度高い」と判断。自宅の台所用漂白剤などでも白色化するとの弁護側主張を退けた。
その上で、妻が死亡前、嘔吐(おうと)やベッドから繰り返し落ちるなどの異常な症状を示していたのに、吉田被告が救急車を呼ばなかったことにも言及。「『二日酔いだと思った』との被告の供述は信用できない。被告がメタノールを摂取させたとすれば合理的に説明できる行動だ」とした。
殺人容疑で逮捕され、警視庁池上署に入る吉田佳右被告=2022年9月、東京都大田区
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