首都圏で相次ぐ広域強盗事件で、実行役の大半が交流サイト(SNS)で「闇バイト」に応募して集まった可能性が高い。逮捕された者の供述から、合法的に高額を稼げるとうたう「ホワイト案件」という言葉につられて個人情報を伝えた途端、一転して強盗をするよう脅す手口が浮かぶ。警察当局は「応募した後でも相談を」と呼びかけている。(米田怜央、鈴鹿雄大、足立優作)

◆応募時に運転免許証など画像を送信、その後に脅され

 「個人情報を知っている」「どうなるか分かっているだろうな」。9月18日未明にさいたま市西区の住宅で起きた強盗事件で、実行役の男らは指示役から脅されていたとみられる。

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 捜査関係者によると、実行役らはSNSで、1回数万円の報酬で荷物や人を運ぶ「ホワイト案件」に応募。秘匿性の高い通信アプリでの連絡を求められ、顔写真や運転免許証の画像を送信した。待機場所に集まると、仕事は「強盗」に急変。個人情報を握られ逃げられないという恐怖に駆られ、強盗を実行したという。  横浜市青葉区で今月15日に起きた強盗殺人事件でも、逮捕された男はSNSでホワイト案件に応募し、身分証の画像で個人情報を伝えていた。「途中で犯罪に加担することに気付いたが、家族にも危害を加えられると考えると断れなかった」と説明。他の事件の実行役たちも「(指示役から)逃げたら殺すと言われた」などと供述している。

◆警察庁「応募した後でも相談を。あなたや家族を保護します」

 埼玉県所沢市の事件を巡っては、若い男性から「闇バイトに応募したが、怖くてやめた」と警察に相談があり、別の応募者の摘発につながった。警察庁は18日、X(旧ツイッター)の公式アカウントに注意喚起の動画を投稿。強盗に加担しようとしている人に「勇気を持って抜け出し、警察に相談をしてください。あなたや家族を確実に保護します」と呼びかけた。  東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県で起きた一連の事件ではこれまでに約30人が逮捕された。だが、指示役は特定されていない。    ◇

◆求人は犯罪をにおわせず巧妙化

 「安全に稼げます」「誰にでもできる簡単な仕事」「詳しくはDM(ダイレクトメッセージ)で」。警察庁によると、闇バイト求人には一見、簡単に稼げそうな雰囲気をあおる文言が並ぶのが特徴という。  求人の舞台の一つは、今回の連続強盗事件でも使われたX(旧ツイッター)。求人情報サイト大手「バイトル」を運営する「ディップ」の分析では、強盗を意味する「タタキ」や、ニセ電話詐欺など特殊詐欺の受け子、出し子を指す「UD」といった犯罪を示唆する隠語が減り、「上場企業の仕事」という権威づけや、一般的な給料設定を示すなど巧妙化している。

◆高校生の8割、求人の文面から闇バイトと見抜けず

 同社は昨年12月、高校生250人に、闇バイトの求人を見抜けるかどうかをクイズ形式で調べた。「電話受け付けのお仕事です」など六つの募集文面を示すと、8割近くの生徒が完全には見抜けなかったという。担当者は見分けるコツとして「応募自体への報酬を記載し、DMでのやりとりに移行する求人は避けるべきだ」と話す。  Xだけでなく一般のアルバイト募集サイトにも、闇バイトが潜むケースがある。ディップの担当者は「企業への訪問確認などで、闇バイトの求人掲載を防いでいる」という。警察庁によると、昨年全国で摘発した受け子の3%は、同社以外の求人サイトを経て加わっていた。(米田怜央) 

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