2004年10月の新潟県中越地震では、車中泊で長時間同じ姿勢でいるために生じる「エコノミークラス症候群」が相次いだ。中越地震を含む各地の災害で住民を検診した新潟大大学院特任教授の榛沢和彦医師(心臓血管外科)は「避難所環境が悪いために車中泊をする人がいる。一刻も早く環境を改善すべきだ」と訴える。23日で地震から20年となった。
榛沢氏は07年の新潟県中越沖地震、11年の東日本大震災などでも被災地で検診した。その中で感じたのは、狭いスペースでの雑魚寝や、高齢者には負担となる和式の仮設トイレという避難所環境の悪さだ。
榛沢氏によると、エコノミークラス症候群は、足の静脈にできた血栓が肺などに移動して詰まり、死亡することもある。災害時は感染症の懸念やプライバシー確保のため、避難所を避けて車中泊をする人もおり、発症しやすい。避難所でも体をあまり動かさないとリスクが高まる。
榛沢氏が中越地震直後、新潟県小千谷市で車中泊をした人の足を検査機器で調べると、3割に血栓が見つかった。一般の人では2〜4%程度といい、大幅に高い割合だ。榛沢氏の調査では、中越地震の死者68人のうちエコノミークラス症候群が原因とみられる死者は7人に上る。能登半島地震でも同症候群の疑いの死者が出た。
対策としては小まめな運動、水分補給などがあるが、抜本的な避難所環境の改善が必要だ。
避難所の冷たい床の上で雑魚寝をすると、血流が悪くなり、血栓ができやすくなるほか、ほこりを吸い込んで体調を崩す恐れもあり「災害関連死につながる」と榛沢氏は指摘する。そうした事態を防ぐため、段ボールなどの簡易ベッドの使用を訴えているが、自治体職員が重要性を理解していなかったり、人手が不足していたりして、使われないこともあるという。
被災自治体は災害で生じる膨大な業務に追われ、避難所運営に手が回らないこともある。榛沢氏は、行政機関は部署異動があり、職員に災害の知識が蓄積されないと主張する。「災害対策に特化した省庁で専門家を育てることも必要だ」と語った。〔共同〕
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