〈衆院選2024 選択的夫婦別姓を求めて〉
④立命館大学国際関係学部・山口智美教授に聞く
 選択的夫婦別姓制度は、1996年の法制審議会で導入を認める答申がされました。ですが、それから約30年止められたままになっているのは、日本会議や今回衆院選でも政治家とのつながりが厳しく問われている旧統一教会のような「宗教右派」と呼ばれる団体に支持されている自民党の人たちが筆頭となり、反対してきたからです。

◆「家族が崩壊」怪しい主張なのに

 反対派は「別姓で家族が崩壊する」と主張し、「伝統的家族」にこだわる。両親の姓が違うと「子どもがかわいそう」とも言うが、主張が非常にあいまいで怪しいのに、一定の人たちに説得力を持ってしまった時代が長く続きました。

立命館大学国際関係学部・山口智美教授

 現在は、世論調査がとても変わってきて、マジョリティー(多数派)が別姓を支持しています。しかし、「宗教右派」と呼ばれる勢力にとって、別姓制度の導入を阻止することは大きな運動の目的の一つ。保守政治家たちにとっては大きな票田の一つであり無視はできず、連携してきたという経緯があります。

◆海外の右派の活動と比べても異様

 自民党内の一部の人たちにとっては絶対に負けたくないテーマで、その人たちが政治に力を持っています。今月、国連の女性差別撤廃委員会で日本の女性政策について対面審査がありましたが、国連から強い勧告が出ても、世論調査で賛成の意見がどんなに増えても、こうした人たちが権力の中枢にいれば実現は遠いと思います。石破茂首相も総裁選では別姓制度を進めるのが当たり前という姿勢だったのに、就任後は急に後ろ向きになった。党内の反対派への配慮が働いたのではと推測します。  海外でも、宗教右派は人工妊娠中絶やトランスジェンダーの人たちの権利獲得に反対するなどの運動をしていますが、姓に関してそこまでこだわる日本の状況は異様に映ります。(聞き手・竹谷直子)   ◇ 〈衆院選2024 選択的夫婦別姓を求めて〉  選択的夫婦別姓制度の導入に向けた機運が高まっている。長年、自民党内の保守派議員の反対で導入が見送られてきたが、6月には自民党の有力な支援団体である経団連が早期導入を求める提言をし、9月の自民党総裁選でも争点に。なぜ導入を求めるのか。衆院選に合わせ、さまざまな立場から制度を求める声を伝える。 

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