死者・行方不明者計63人を出す戦後最悪の火山災害となった御嶽山(長野・岐阜県境)の噴火災害をめぐり、遺族らが国と長野県に賠償を求めた訴訟で、東京高裁(筒井健夫裁判長)は21日、請求を棄却した一審・長野地裁松本支部判決を支持し、遺族らの控訴を棄却する判決を言い渡した。

 御嶽山は2014年9月27日午前11時52分に噴火。登山者ら58人が亡くなり、5人が行方不明となった。裁判では、噴火前の気象庁による警戒の呼びかけが適切だったかが主な争点だった。

 御嶽山は、噴火17日前の9月10日に52回、11日に85回の火山性地震を観測。噴火2日前の25日には、噴火を予想させる現象の「山体膨張」を示す地殻変動の可能性が指摘されたが、気象庁は断定できないとした。一審はこの判断について「15~20分ほどの検討で安易に結論を出したのは違法だ」と指摘した。ただ、警戒レベルを上げても確実に被害を防げたとは言えないとし、国の賠償責任を否定した。

 高裁判決は、過去には1日50回以上の火山性地震が観測されても噴火しなかった例があり、国土地理院による御嶽山噴火後の検討でも山体膨張が生じたと断定できないと判断されたことから「気象庁の対応が著しく合理性を欠くとはいえない」と結論づけた。

弁護団「上告も検討」、気象庁や長野県もコメント

 判決後に会見した弁護団の山下潤弁護士は、「行政側の『裁量』を理由に、気象庁の判断を免罪してしまった判決だ」と批判。最高裁への上告も検討するという。

 原告の1人で、次女を亡くした長山幸嗣さん(54)も、「高裁判決はあっさりとした内容で、残念でならない」と語った。「気象庁は噴火の予兆について議論もせず放置していた。裁判所にはそうした点をもっと丁寧に見てほしかった」と肩を落とした。

 気象庁は「今後も、関係機関と連携しながら、火山活動の監視や評価の技術を向上させるとともに、噴火警報などの火山防災情報を適時的確に発表するよう努めてまいります」とした。

 長野県の阿部守一知事は「極めて大きな被害をもたらした御嶽山噴火災害の教訓を踏まえ、引き続き、ご遺族の皆様の思いにも寄り添いながら、火山防災対策の強化などに取り組んでまいります」とのコメントを出した。(米田優人、金子和史)

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