能登半島豪雨の被災地に警視庁広域緊急援助隊(広緊隊)として派遣された同庁警備部特科車両隊の佐藤輝之副隊長(50)が東京新聞の取材に応じた。地震被災地を襲った豪雨の現場で困難を極めた行方不明者の捜索活動を語った。(小倉貞俊)

◆地震の爪痕が捜索をさらに困難なものに

 「土砂が家々をのみ込み、がれきは海にまで広がっていた。想像を超えた光景だったが、何としても捜し出すという思いだった」

捜索活動を振り返る佐藤副隊長

 1月の地震被害から復旧途中の能登地方を襲った記録的豪雨。佐藤副隊長は9月27日夜、広緊隊第1陣の大隊長として隊員約120人と現地入り。5日間の活動後、第2陣に引き継いだ。  捜索を困難にしたのはやはり、地震の爪痕だった。道路が通行止めで車両が入れなかったり、家屋が損壊して倒れる危険があったり…。「隊員への2次被害防止に努めながら、慎重な作業に苦労した」と語る。重機だけでなく、時に手作業でがれきや土砂を撤去しながら、ドローンや警備犬も駆使して捜索を続けた。

◆家族に頭を下げられ「使命を果たそうと奮起」

海岸沿いで行方不明者を捜索する警視庁の広域緊急援助隊員ら=9月28日、石川県輪島市で(警視庁提供)

 輪島市門前町の現場では、捜索開始前に、土砂に流されて行方不明になった女性の家を訪問。家族とみられる憔悴(しょうすい)しきった中高年の男女から「どうかよろしくお願いします」と深々と頭を下げられ、「身が引き締まる思い。隊員たちも使命を果たそうと奮起した」。女性の遺体は昼ごろ、自宅から離れた海岸で見つかった。また能登町の捜索現場では、消防ヘリからの情報で別の行方不明者の遺体を搬出することができた。  「想像を超える自然災害の脅威を改めて実感した」という佐藤副隊長。首都圏でも直下型地震をはじめ、大災害が起きる懸念はあるが「いつ起きても対応できるという強い覚悟を持ち、日常の訓練を徹底していく」と力を込めた。 

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