③慶応大・阪井裕一郎准教授に聞く 日本では現状、互いに姓を変えたくない男女は法的に結婚できないシステムになっています。夫婦同姓を法律で義務付けているためで、そうした国は世界でも日本だけです。
◆「個人の自由」を保障するか、しないのか
同姓と別姓のいずれが良い制度かという議論になりがちですが、真の問題は同姓を強制することの理不尽さにあります。同姓の強制に合理的な正当性は見当たらず、議論すべきは「同姓か別姓か」ではなく「強制か選択か」なのだと強調したいと思います。選択的夫婦別姓について話す慶応大の阪井裕一郎准教授
別姓を選ぶ自由を法律に求めるのは「個人の自由」を保障するものであり、必ずしも「男女平等」を求めるものではありません。人権の問題という認識は広がっていますが、別姓を求める一部の女性の主張、といった誤ったイメージで捉えないことも必要です。 今の日本では、女性が男性の姓に変えるのが当然との慣習が強く、根本にはジェンダーの問題もあります。ただ、そもそもなぜ結婚と姓をトレードオフにするのか、なぜ片方が姓を変えなければならないのかという点が問われるべきです。◆「名字を変えたくない、だけで結婚する権利を奪われている」
家族社会学が専門で、10年以上前に事実婚の当事者への聞き取りを始めました。そこでわかったのは「姓を変えたくない」という理由で、法律婚をしていない人が一定数いることでした。事実婚の人の多くは、必ずしも法律婚自体に否定的ではなく、「生まれ持った名字を変えたくない」という理由だけで結婚する権利を奪われているのだと気づかされました。 多様なパートナーシップや出産、子育てのあり方を認めることで、家族形成を促すのが世界の動向です。日本で少しでも結婚のハードルを下げようと考えるならば、選択的夫婦別姓は取り組むべき施策の一つだといえるでしょう。(聞き手・坂田奈央) ◇ 〈衆院選2024 選択的夫婦別姓を求めて〉 選択的夫婦別姓制度の導入に向けた機運が高まっている。長年、自民党内の保守派議員の反対で導入が見送られてきたが、6月には自民党の有力な支援団体である経団連が早期導入を求める提言をし、9月の自民党総裁選でも争点に。なぜ導入を求めるのか。衆院選に合わせ、さまざまな立場から制度を求める声を伝える。 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。