日本被団協の事務局次長を務める和田征子さんは(80)1歳10か月の時に長崎市の自宅で被爆し、母親から聞いた被爆体験を元に各地で証言を続けてきました。

ノーベル平和賞の受賞決定を受け和田さんのもとには国内外から取材の申し込みや問い合わせが相次いでいるということで、「これまでは『日本被団協って何』と言う人が本当に多く、『被爆者ってまだいるの』と言う人もいるので、今回の受賞で日本被団協という名前を覚えてもらえたことが本当に嬉しい」と話しています。

そのうえで、「被爆者がずっと証言を続けてきたことが受賞理由になり、核兵器ではなく私たちのことばが、核の使用を阻止する抑止力になったのだと思う。苦しいことでもことばにして残し、話を続けた68年間の積み重ねが今に至ったと思うので、被団協を作るところから始めて大変な苦労をされてきた人たちと一緒に喜びたい」と改めて受賞の受け止めを語りました。

一方、被爆者の平均年齢が85歳を超えた現状を踏まえて「今はまだ証言をしてくれる人たちがいるが、誰も証言できなくなり生の声を届けられなくなったらどうしようと考えると本当に怖い。だからこそ今回の受賞が転機にならなければならず、さらに継承していくために若い人たちも頑張っているがもっともっと進めていってほしい」と話しています。

そして世界で核の脅威が高まっている現状について「今はどこを見ても恐ろしいことが起こっていて、誰も安心して住んでいないような気がする。だからこそ安心して平和に暮らせる世界を取り戻したい。そして私たちは1年中被爆者であり、核実験を含めて核の被害にあった人たちの救済は1世代だけで終わらず、何代も続くことを知ってもらいたい」と訴えました。

被爆者たちの歩みや訴えに関心広がる

ノーベル平和賞に日本被団協が選ばれたあと、都内の書店では被団協に関する書籍を集めた特設コーナーが設けられるなど、被爆者たちの歩みや訴えに関心が広がっています。

東京 新宿区の書店では、日本被団協が被爆の実相を伝えるために3年前に出版した「被爆者からあなたに」を販売していますが、先週のノーベル平和賞の発表後、その日のうちに売り切れたということです。

その後も問い合わせが相次いだため、出版社から数百冊を取り寄せ、18日からフロアの一角に特設コーナーを設けました。

出版社によりますと、ノーベル平和賞の発表後、これまでに全国の400を超える書店から注文が入っていて、すでに在庫が完売したため重版が決まったということです。

紀伊國屋書店新宿本店の中里有里さんは「夏の時期に手に取る人が増えることはありましたが、これほどの反響は過去にありませんでした。本を通じてさらに関心を深めてもらいたいと思います」と話していました。

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