シンガポールのロングバーで提供されたシンガポール・スリング=2024年8月(共同)

 シンガポールにある名門ホテルのバーで、長年多くの人を魅了しているカクテルがある。土地の名を冠した「シンガポール・スリング」。オリジナルのレシピは100年以上前にこのバーのバーテンダーが考案したとされる。ホテルから世界各地に広がったが、ここの1杯を目当てに訪れる外国人観光客も多い。(共同通信シンガポール支局=本間麻衣)

 1887年創業のラッフルズホテル内の「ロングバー」。淡いピンク色をした作り立てのシンガポール・スリングが、カウンターに置かれては客の元に運ばれて行く。少し背の高いグラスにパイナップルとダークチェリーが添えられ、華やかさが引き立つ。店員はカウンターとテーブルとの往復で忙しそうだ。

 ホテルなどによると、このカクテルが誕生したのは1915年。シンガポールでは、女性はエチケットとして公共の場で飲酒してはいけないとされていた時代だった。

 当時のロングバーは通りに面した別の場所にあり、人目に付いた。女性にも楽しんでもらおうと、バーテンダーのニャム・トン・ブーンが透明な酒を使ってジュースのように見えるカクテルを思い付いたという。

 2024年現在のレシピはジンをベースにパイナップルジュース、ライムジュースなどを使用。レシピは改良が重ねられているようだ。

 ロングバーでは他にもさまざまな飲み物を提供しているが、シンガポール・スリングは不動の人気だ。価格は1杯39シンガポールドル(約4300円)で、これに消費税やサービス料がかかる。それでも1日平均600~700杯、多い時は千杯の注文があるという。ロングバーのある2階から行列が階段下まで続くことも。

 飲んでみると、少し甘く、さわやかさが後を引いた。「どう? おいしいでしょう?」と女性店員がほほ笑んだ。

シンガポールにあるロングバーのカウンターに置かれたカクテル=2024年8月(共同)
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