石川県能登地方を襲った記録的豪雨で連絡が取れなくなり、その後遺体で見つかった輪島市久手川町の中学3年、喜三翼音さん(14)の葬儀が12日、市内の寺で営まれた。同級生や捜索に加わった地元消防団員ら多くの人が訪れ、喪主の父、鷹也さん(42)は「14歳の若さで亡くなり、これ以上の悲しみはない」と声を震わせた。計14人が犠牲となった豪雨は発生から3週間となった。

喜三翼音さんの葬儀に参列した生徒ら(12日午前、石川県輪島市)=共同

寺には、始まる1時間も前から次々と弔問客が訪れた。入り口には制服やアルバム、愛用のぬいぐるみが飾られ、堂内では生前の翼音さんをたどる映像が流された。

鷹也さんは「捜索していただいた人たちに感謝申し上げます」とあいさつ。時折消え入りそうな声になりながら「泣いてばかりでは翼音が心配するから、これからも家族力を合わせて頑張っていきます」と語った。

叔母の松本志穂理さん(34)は「守ってあげられなくてごめんね」と涙ぐんだ。翼音さんが「しーちゃん」と呼ぶ間柄で、「娘のようだった」。

おしゃれに興味を持ち始めた翼音さんにあげたヘアブラシや服、過去にプレゼントした財布も捜索で発見され、「ずっと大事に使ってくれていた」と実感した。遺体発見時に身につけていたジャージーも松本さんが「喜三」と手書きしたお下がりだった。「それが(身元確認を)早めてくれたのかな」とつぶやいた。

同級生らが、目をはらしながら抱き合う姿も見られた。小1から友人の女子生徒(14)は「学校を休んでいるだけのような気がして、今も信じられない」。中学で初めてできた友達が翼音さんだったという女子生徒(14)は「生まれ変わったら絶対に幸せになって」と声を絞り出した。

翼音さんは豪雨に見舞われた9月21日、自宅に1人でいて安否不明となった。国土交通省などによると、付近を流れる塚田川では土石流が発生したとみられ、家ごと巻き込まれた可能性がある。同30日、輪島市から約170キロ離れた福井港沖合で、漁船が遺体を発見。DNA型鑑定で身元が確認された。〔共同〕

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