新興企業に投資するベンチャーキャピタル大手「ジャフコグループ」(東京都港区)の女性契約社員が、セクハラ被害を訴えた後に不当に雇い止めされたとして、同社に安全配慮義務違反に基づく損害賠償や地位確認などを求めている。女性の代理人は11日に会見し、会社はセクハラの加害事実を認めたが法的責任はないと主張したと説明。「業界を代表する企業が法的責任を否定し、社会的責任に基づく対応も拒否するのは、重大な問題」と訴えた。

◆忘年会の帰りにマフラーで首を絞められ…

 女性の代理人によると、女性は2018年に2年更新の契約社員として入社。2019年12月、会社の忘年会から帰宅しようとしたところ、執行役員と社員にエレベーターホールで引き留められ、マフラーで首を絞められて胸を触られた。翌月、加害者2人は懲戒処分を受けた。女性はその後に退職勧奨を受け、退職に応じないとして給与を半額にされた。精神的不調から休職し、2022年に雇い止めされた。

会見で女性のセクハラ被害などについて話す指宿昭一弁護士(左)ら=11日、東京都内で

 ジャフコは、累計投資先上場企業数が1000社超という老舗ベンチャーキャピタル。女性の代理人の指宿昭一弁護士は「労働者や投資家に対する人権侵害を引き起こさないように防止する重い社会的責任を負っている」と指摘する。会社側との話し合いが平行線ならば、提訴も検討するという。

◆ジャフコ「セクハラと雇用契約終了の関連は全くない」

 ジャフコの広報担当は取材に「セクハラと雇用契約終了との間に関連は全くない」と回答。企業としての責任については「お答えは差し控える」とした。  指宿弁護士らは、業界団体の日本ベンチャーキャピタル協会(東京都港区)に対しても、業界でセクハラが起きない環境をつくることなどを申し入れした。同団体はハラスメントと差別の根絶に向けて取り組みを加速するとしたが、この事案に関しては「個別の案件へのコメントは差し控える」とした。(竹谷直子) 

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