女性文化賞を受賞した坂本菜の花さん=石川県珠洲市の湯宿さか本で
同賞は1997年に詩人の故高良(こうら)留美子さんが個人で創設、2017年から女性史研究家の米田佐代子さん(90)が引き継いできた。米田さんは、坂本さんが著作などで発信している「他者の痛みを自分の痛み」として受け止める姿勢に共感。「対立と分断が広がる世界で、意見が違う人も排除しない大切さを知っている」と評価した。 11月6日に東京都内で坂本さんを囲む会を開き、賞金50万円と副賞のリトグラフを贈呈する。◆「珠洲の将来のため」賞金で街に木を植えたい
坂本さんは15歳で親元を離れ、沖縄県の珊瑚(さんご)舎スコーレ高等部で学んだ。在学中の3年間に故郷の北陸中日新聞でコラムを連載。さまざまな出会いや交流を重ねて「沖縄の痛み」に向き合う率直な筆致は大きな反響を呼んだ。新聞コラムをまとめた本は2019年に出版され、ドキュメンタリー映画もつくられた。旅館敷地内の井戸の配水管を修理する坂本菜の花さん(右)=石川県珠洲市で
卒業後は珠洲市に戻り、実家の宿を家族とともに営んでいる。今年1月の地震では大きな被害を免れた宿に、避難疲れをした住民たちを受け入れてきた。公費解体が進まない地域のために重機を扱う免許も取得した。その故郷は9月の豪雨で再び打ちのめされている。 今回、賞金の原資が「老人ホームに入るために蓄えていた」という米田さんの私費と聞いて当初は固辞したが、「珠洲の未来のためにいただいた」と思い定めた。 賞金の使い道として、更地になった街の中心部に木を植える計画を練っている。「私を育ててくれた家族や周囲のみんなでいただいた賞です。やり場のない思いを抱えている地域の人々のためにできることを考えたい」と話した。(中山洋子) 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。