「逃亡解散」「早すぎ解散」―。自民党派閥の裏金問題を引きずりつつ、石破茂首相は9日、組閣から10日足らずで衆院を解散した。今回の解散をどう命名するか、東京都内で有権者に聞いた。(東京ニュース取材班)

衆院の解散を伝える電光ニュースの前を歩く人たち(平野皓士朗撮影)

◆「十分に審議すると思ってた。手のひら返しだ」

 「裏金問題から逃げているように映るので『逃亡解散』ですかね」。大学の授業後に渋谷駅周辺で買い物をしていた埼玉県所沢市の大学1年の男子学生(19)は淡々と話した。「大学で学ぶための金銭的な支援を手厚くしたり、子どもを産み育てやすい環境づくりをしてほしい」と若者向けの政策を求めた。  東京都北区のJR王子駅前で帰宅途中だった千葉市の研究者小林竜馬さん(44)は裏金問題が招いた結果の「自業自得解散」と名付けつつ、「石破さんは何もしなければ弱腰だと批判される。選挙に勝つかどうか分からない中で解散したのは、リーダーシップがあるとも言える」と話す。  「裏切り解散」と名付けたのは、葛飾区の自宅でくつろいでいた上野すみ江さん(78)。「自民党の中では自由に物を言う人だった。裏金や統一教会の問題について十分に審議すると思っていたのに、手のひら返しだ」と批判し、「自民党の中で有力者のあやつり人形なのでは」と推測した。

衆院の解散を伝える電光ニュース=9日、東京都渋谷区で(平野皓士朗撮影)

◆「ドタバタと、あっという間に解散」

 JR渋谷駅近くで待ち合わせ中の北区の男性会社員(31)は、組閣後の低支持率も踏まえて「これまで日陰の存在だったので『不人気者解散』かな」と名付けた。「過去の発言からは予算委員会をやった後、11月くらいに解散かと思っていた」と組閣間もない解散にもチクリ。  時期尚早との批判は他にも。立川市のJR立川駅前でバスを待っていた大学生の堀快成さん(19)=東大和市=は「総裁就任前に言っていたより早かった」として「早すぎ解散」と名付けた。とはいえ「信頼できる野党が現状見つからない。このままだったら安定感のある自民党を選ぶかもしれない」。  三鷹市で飲食店を経営する君島浩子さん(62)は「ドタバタと、あっという間に解散してしまった印象。自民党内のよく分からない綱引きがあるのかもしれないが、私たちは置いてきぼりのようで、すっきりはしない。名付けるなら『ドタバタ解散』ですかね」と語る。事実上スタートした選挙戦には「何をしてくれるのか、ぼんやりとしか分からない。もっと具体的に政策を語ってほしい」と注文した。

衆院の解散を伝える電光ニュース(平野皓士朗撮影)

◆「予算委員会をやってから解散すべきだった」

 同窓会のため大田区のJR蒲田駅に来ていた横浜市の無職男性(75)は解散への命名は保留しつつ「やっぱり予算委員会をやってから解散すべきだった。党首討論だけでは、どういう政権なのか評価することができない」と訴える。衆院選の投票先は「とにかく自民党以外」。与野党の勢力が拮抗(きっこう)しない限り「緊張感のある政治は実現しない」と訴えた。 

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