世界最多のイスラム教徒(ムスリム)がいるインドネシアで、ラマダン(断食月)中のムスリムが日没後最初に食べる甘味などの軽食「タクジル」が「おやつにぴったり」と非ムスリムから注目されている。交流サイト(SNS)ではムスリムとの“争奪戦”を描くイラストや動画が投稿されているが、対立よりも宗教の共存の象徴として捉えられている。(共同通信=山崎唯)

 ムスリムはラマダン中、日の出から日没まで飲食を断ち、日没後の礼拝前にタクジルを食べる。首都ジャカルタ中心部では甘味類や揚げ物、ピリ辛のビーフンを並べた屋台が軒を連ね、通常よりも小さい一口サイズで20~100円ほどと手頃だ。

 金曜日の集団礼拝が終わった午後3時過ぎ、団子のヤシ砂糖煮などの屋台に長蛇の列ができていた。キリスト教徒のアンドレアスさん(20)は「SNSに刺激され初めて買いに来た」と興奮気味だ。

 インドネシアは2億7千万人超の人口の8割以上がムスリムだが、イスラム教を国教とせず他宗教との共存を定める。売り子でムスリムのシティ・ヌルコティマさん(30)は、キリスト教徒らもタクジルを求める姿を見て「互いの宗教を分かり合うインドネシアらしい」と喜ぶ。

 SNSでは断食で体力が落ちたムスリムを横目にタクジルを買い占める非ムスリムのイラストが流行。タクジルが好きだと告白した牧師がムスリムの友人に、3月末のキリスト教の復活祭(イースター)で飾り付けに必要な卵を「買い占めてやる」と“復讐”を通告されたと語る動画も出回っている。

 友達6人分のココナツミルクを使った甘味を屋台で買ったキリスト教徒エベリンさん(36)は「種類も豊富で楽しい。友達もキリスト教徒なので、みんなで日没前に食べちゃうけどね」と笑った。

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