川崎市内の水槽で見つかったモトスマリモ=国立科学博物館提供

 国内でこれまで1例しか見つかっていなかったマリモの仲間「モトスマリモ」が、川崎市の民家の水槽から見つかりました。水槽には川で拾った石が入れられており、そこに付着していたものが成長したとみられます。1例目も別の民家の水槽で見つかっており、人工的な環境下で増えやすい特徴があるといいます。調査にあたった国立科学博物館は、他の水槽などでも見つかる可能性があるとして情報提供を呼びかけています。  モトスマリモは、2022年に甲府市の民家の水槽から国内で初めて見つかりました。水槽の中には、山梨県の本栖湖で採取した二枚貝が入れられており、そこに付いていたものが大きくなったと推定されています。国内のマリモの仲間では、北海道の阿寒湖などに生息するマリモ、富山県立山町の人工池から見つかったタテヤママリモに続く3種目でした。  博物館によると、川崎市の男性は21年7月、東京都、神奈川県境を流れる多摩川の中流域の河川敷で、こぶし大の石を拾って熱帯魚を飼育している水槽に入れました。23年6月、石の表面についていた藻が半球状に丸くなり、周囲には5~6個のマリモのようなものがあることを確認。その後、さらに数が増え、大きさは最大で直径約5センチになりました。  連絡を受けた博物館が遺伝子解析などをした結果、国内2例目のモトスマリモであることがわかりました。一方、細かく見ると、甲府市のものとは遺伝的な違いがあり、1例目と2例目はもともと同じ個体だったものではなく、由来は異なると考えられるそうです。  博物館は23年から、本栖湖だけでなく、同じ富士五湖の山中湖や西湖でも潜水調査をしていますが、これらの湖ではまだモトスマリモは見つかっていません。今後は、調査範囲に多摩川水系も加え、自然環境下での発見を目指します。  モトスマリモは、国外ではオランダの熱帯水族館などで発見されていますが、その生態はよくわかっていません。博物館の辻彰洋研究主幹(微細藻類)は「発見例が増えれば、分布など特徴が見えてくる」と指摘します。  ただ、自然環境下では、丸くならずに糸状になっているとみられ、なかなか見つけるのは難しいといいます。そこで期待するのが水槽からの発見です。「阿寒湖などのマリモとは異なり、温かい水の中で生育できる特徴がある。水槽の中にマリモのようなものが現れたら博物館まで連絡してほしい」と辻さんは話しています。情報提供は、博物館ホームページの「お問い合わせフォーム」へ。 (榊原智康)


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