袴田巌さん(88)の弁護団10人は7日、東京高等検察庁を訪れ、最高検察庁と東京高検宛てで控訴しないように求める申し入れ書と、5万人余りの署名、それに法学研究者の声明文を手渡しました。
申し入れ書では「無罪判決を覆すことは不可能で、人道的な見地からも58年間もの長期間の審理を終結させる決断をすべきだ」としています。
その後、会見を開いた弁護団によりますと、検察からは「証拠に基づいて判断する。袴田さんの年齢なども検討の対象になる」という説明があったということです。
検察とやり取りした弁護士は「対応した検事は証拠の議論の中心は、最大の争点だった“5点の衣類”に付いた血痕の赤みだという認識も示していた」と話していました。
弁護団の事務局長の小川秀世 弁護士は「袴田さんの体の衰えを考えると、絶対に控訴させてはならないので、やれることは何でもやりたい」と話していました。
人権団体「”人質司法” 課題を解決すべき」
袴田巌さんに無罪が言い渡されたことを受け、人権団体などが会見を開き、容疑を認めないと勾留が長引く「人質司法」と呼ばれる課題を解決すべきだと訴えました。
再審=やり直しの裁判で、袴田巌さん(88)に無罪を言い渡した9月26日の静岡地方裁判所の判決では、逮捕後、否認していた袴田さんに1日平均12時間の取り調べが行われ、非人道的な扱いがされたとして、袴田さんが自白したとされる調書を捜査機関によるねつ造と認定しました。
国際的な人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」などは7日、都内で会見を開き、容疑を否認すると勾留が長引く「人質司法」と呼ばれる課題を解決すべきだと訴えました。
団体の土井香苗 日本代表は「『人質司法』はえん罪の温床になっていて、袴田さんも被害者だ。事件から58年たった今も本質的に全く変わっていない」と述べました。
甲南大学の笹倉香奈教授は「無罪推定とえん罪の防止という原則に基づき、身体を拘束しない刑事手続きに重点を置いた法律に変えていくべきだ」と訴えました。
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