アンケート調査は、あしなが育英会がことし7月に育英会の奨学金制度を利用している子どもの保護者を対象にインターネットで行い、3107人が回答しました。

回答した人の世帯所得は300万円未満が72.3%を占め、就労形態は正社員が30.1%で、パートやアルバイト、契約や派遣などの非正規雇用が59.2%
などとなっています。

去年の同じ時期と比べて収入が増えたかを聞いたところ、
▽「増えた」と回答したのは14.5%にとどまり
▽「変わらない」が57.3%
▽「減った」が28.2%で
全体の85%以上が収入が上がっていないと回答しました。

また、物価上昇分を収入でカバーできているか尋ねたところ「カバーできない」と回答した人は94.2%に上りました。

さらに、何を1番節約しているかを尋ねた質問には、
▽「食費」が52.8%で最も多く
次いで
▽「被服・美容代」が16%
▽「光熱費・水道代」が13.9%
などとなりました。

中には、食費を切り詰めたり、光熱費節約で冷房を使わなかったりして、体調不良につながったという声も複数寄せられたということです。

調査したあしなが育英会の玉井義臣会長は「経済全体がよくなっている一方で、貧しい人たちは置き去りにされている。こうした家庭の子どもたちが高校や大学に進学できるよう支援を訴えていきたい」と話していました。

1人親世帯 1日2食で過ごす日も

今回のアンケートに回答した千葉県に住む50代の女性は、15年前に夫を病気で亡くし、今は高校3年生の娘と2人で生活しています。

女性は化粧品販売を営んでいますが、コロナ禍の落ち込みから回復せず、そこに物価高が追い打ちをかけているといいます。

生活費は化粧品販売による収入と遺族年金を含めて月20万円前後です。

娘があしなが育英会から受けている月4万円の奨学金は進学に向けてなるべく手をつけずに残したいと考えています。

そのため、生活費を切り詰め、食費を月3万円以内に抑え、昼食を抜いて1日2食で過ごす日も多いということです。

さらに光熱費や水道代を抑えるため、入浴も2日に1回に減らしています。

女性は「何とか自分の仕事があるが、病気になるなどを考えるとこれからどう生きていくか不安な日々はずっと続く。もっと弱者に目を向けてほしい」と話していました。

専門家「生活必需品の物価上昇 低所得者の負担感高まっている」

第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストは、今回のアンケートで物価上昇分を収入でカバーできていないと回答した割合が9割余りとなったことについて「最近の物価上昇は食料やエネルギーといった生活必需品が中心で、所得が低い人ほど出費に占める割合が高くなるため、低所得者にとってはより負担感が高まっている」と指摘しています。

そのうえで「物価が上昇すれば政府の税収も増えるのでその税収を低所得者に再分配する政策が求められている。低所得の人に限定した給付金のような支援策を続けていく必要がある」と話していました。

また、物価や賃金の問題に詳しい大阪経済大学経済学部の高橋亘教授は、今回のアンケートで8割以上の世帯が収入が上がっていないと回答したことについて「低所得者層は非正規などの職種や就労の形態が限られるケースが多く、そうしたところでは低賃金が定着してしまっており、大幅な賃金の上昇までは時間がかかっている」と指摘しています。

そのうえで「困窮している世帯については社会的な補償や支援が重要だ。生活の質を向上していくことは私たちの世代でも重要だが私たちの働き方を見ている子どもたちの世代にとってもとても重要なことだ」と話していました。

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