静岡市で開かれた集会に出席し、あいさつする袴田巌さん。右は姉、ひで子さん(29日午後)=共同

1966年の静岡県一家4人殺害事件で死刑確定後、静岡地裁の再審公判で無罪判決を言い渡された袴田巌さん(88)が29日、静岡市内で開かれた判決報告集会に出席し「待ち切れない言葉でありましたが、無罪勝利が完全に実りました」と話し、表情を緩ませた。

26日の判決後、袴田さんが公の場に姿を見せたのは初めてで、会場に詰めかけた多くの支援者から大きな拍手が送られた。

袴田さんは車椅子に乗り、報告会の途中から参加、支援者に支えられ登壇した。マイクを自身で握り「袴田巌でございます」と自己紹介し、「ついに完全に全部勝ったということで、今日はめでたいことで、皆さんの前に出てきた」と続けた。

姉のひで子さん(91)が隣から「皆さんにありがとうと言いな」と促すと、袴田さんは多くの支援者に向け「ありがとうございました」と感謝を述べた。大きな拍手の中、「おめでとう」という言葉とともに見送られ、袴田さんは脱帽して会場を後にした。報道陣に対しては、手を振った。

袴田さんは長期収容による拘禁症状で再審公判の出廷が免除され、ひで子さんが代わりに出廷してきた。ひで子さんは報告会で判決を振り返り「うれしすぎて涙が止まらなかった」と笑顔で語った。「『ありがとう』と巌に言わせたかった」と、袴田さんを会場に呼んだ理由を明かした。

袴田さんの後に登壇した主任弁護人の小川秀世弁護士は、無罪判決の報告をひで子さんから受けた時の袴田さんの様子を振り返り「事件の話をすると拒否反応を見せるが、今回は黙って聞いていた。何か通じていると思い、そのことを報告しようと思っていた」と話し、「(無罪判決が出たことが)伝わっていて、すごくうれしい」と涙を流した。〔共同〕

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