東京・明治神宮外苑の再開発で、伐採樹木を減らすなどの計画見直し案について、事業者による住民説明会が28日、東京都新宿区で開かれた。住民側からは計画の詳細や対話による合意形成を求める質問が相次いだが、前向きな回答はなく、質問を求める参加者の手が挙がる中、会は終了予定時刻で打ち切られた。

神宮外苑再開発について公開の場での対話を求める住民ら=28日、東京都新宿区の日本青年館で(坂本亜由理撮影)

 説明会は午前、午後に分けて2時間ずつ開かれ、計198人が参加。三井不動産、明治神宮などの事業者側が伐採本数を124本減らすことや、イチョウ並木と新球場との距離を当初の8メートルから約18メートルに延ばす見直し案について説明した。

◆住民から質問が次々、事業者からは明確な回答なし

住民説明会の会場に向かう人ら=28日、東京都新宿区で(坂本亜由理撮影)

 質疑では新球場の設計や日照の影響などの質問が相次いだが、事業者側は「確定次第、公表する」「(東京都の)審議会で示す」などと明確な回答を避けた。再開発を批判してきた日本イコモス国内委員会との対話を求める意見も多かったが、「個別の団体への対応については回答を控える」と繰り返した。再開発の根拠となっている神宮内苑の維持についても「維持費はどれくらいなのか」と質問があったが、宗教法人法を理由に開示を拒んだ。  終了後、参加者の男性(41)は「球場を当初からこのように変えるから(イチョウ並木から)後退できる、という説明がないと納得できない。説明会を開いたというアリバイ作りをしたいのではないか」と指摘。70代の女性は「イコモスの指摘で問題を知った。私たちなりにイコモスの指摘と比較できるように説明してほしい」と訴えた。三井不動産の担当者は「いただいた意見で反映できるものは反映する」と話した。

住民説明会終了後、記者会見する三井不動産の事業担当者(坂本亜由理撮影)

 説明会は新宿、港両区の在住・在勤者が対象。計600人まで参加を受け付けていた。一方、再開発の公式サイトで秩父宮ラグビー場を竣工(しゅんこう)から数えて「築76年」と紹介し、住民から「現存するスタンドの築年数と異なる」と指摘されていた問題では、「完成から76年」と表記が修正された。(原田遼、森本智之) 

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