小泉龍司法相は27日、外国籍で在留資格を持たず退去命令の対象となっていた18歳未満の日本生まれの子ども212人に、在留特別許可(在特)を認めたと発表した。6月の改正入管難民法の施行に合わせ、日本で就学した児童生徒らを対象に、人道上の救済措置として特例で在留資格を与える方針を示していた。家族183人も対象とした。(池尾伸一)

特例で交付された在留カードを示すアフリカ系家族(長女は左端)。右端の父親だけには許可されなかった(一部画像処理)

◆「親の入国方法に問題」など理由

 ただ、日本生まれでない場合などは対象外としたほか、救済された世帯のうち3割は親の在留資格を認めず、専門家からは「子どもの人権確保の点から問題」との指摘があがっている。  出入国在留管理庁(入管庁)によると、改正入管難民法が施行された6月10日までに救済の検討対象となった子どもは263人で、このうち11人は自ら帰国し、40人は親の入国方法に問題があることなどを理由に認めなかった。  救済された子どもや家族に与えられた在留資格は「留学」や「特定活動」など。世帯数では140だが、3割に当たる47世帯は親だけ許可せず、このうち17世帯は両親のいずれも不許可とした。入管庁は「違法入国などがあった」と説明しており、強制送還される可能性がある。  在留資格のない子どもたちは「仮放免」として入管施設への収容を免れているが、就労や県境をまたいだ移動を禁じられるなど過酷な生活環境に置かれている。人道上の配慮を求める声が高まり、斎藤健前法相は昨年8月、裁量で在特を付与する方針を表明した。   ◇

◆過酷な「線引き」、救われない子どもたち

 働くことも、許可なく県境を越えることもできず「おりのない監獄」ともいわれる仮放免。出入国在留管理庁(入管庁)の特例措置は、過酷な環境に生きる子どもたちと家族の一部を救済することになった。だが、対象が厳しく「線引き」されたため、家族の中でも対応が異なったり、措置の対象外になったりして救われない子どもたちも多く、苦しい生活と将来への不安にさいなまれている。

日本生まれでないとの理由で在留特別許可をもらえなかった中東出身の高校3年生の女性(左)と中学1年生の弟=埼玉県内で

 「パパが強制送還されないか心配。早く家族で安心して普通に暮らしたい」。アフリカ系家族の長女=高校2年生=は、そう切望する。日本生まれの自身と弟と妹、そして母親には在留特別許可が出たが、父親は過去の手続きに過失があったため許可されず、退去命令を受けたまま。長女は大学で学び、薬剤師になるのが夢だが、父親が働けなければ実現は難しい。  入管行政に詳しい駒井知会弁護士は「子どもを親といつ引き離されるか分からない状態に置くことは、精神や成長に深刻な影響を及ぼす。子どもの権利や家族が一緒に暮らす権利が侵害されており、早急に対象を拡大すべきだ」と指摘する。

在留特別許可をもらえなかった中東出身の高校3年生の女性(左)と中学1年生の弟。女性は「授業料をどう工面すれば良いのか」と訴える=埼玉県内で

 また、日本生まれでないという理由で在留を認められなかった子どもたちも多い。中東出身の女性(19)=高校3年生=は母国で迫害され、8歳のときに両親と2人の弟とともに来日。今回の特別措置に期待を寄せたが、家族全員が在留資格を認められなかった。だれも働けず、支援頼みの貧困に直面する。女性は通訳になるため外国語の専門学校に合格したが、「授業料をどう工面すれば良いのか」と不安を募らせる。  さらに、今回の救済措置の対象は、日本生まれの仮放免者の中でも、退去命令の出ていた子どもたちに限られている。指宿昭一弁護士は「日本生まれでないというだけで対象外となった子どもたちや、退去命令は出されていないものの仮放免者として過酷な生活を強いられている子どもたちを救済しないのは、人道上、大きな問題だ」と語った。 

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