石川県奥能登地方を襲った豪雨で、国名勝の白米(しろよね)千枚田(石川県輪島市白米町)では複数箇所で土砂崩れが起きた。能登半島地震で田にひびが入るなど甚大な被害を受け、関係者の懸命な復旧作業で今月上旬に稲刈りを終えたばかり。度重なる打撃に、管理を担う白米千枚田愛耕会のメンバーは「今は何も考えられない」と言葉を失った。

豪雨により崩れた田(中央部分)=石川・輪島市で

 白米地区は国道249号の土砂崩れで一時孤立。市中心部と行き来できるようになった24日朝「道の駅 千枚田ポケットパーク」に、地震で地区外に避難していた住民らが集まった。パーク脇に広がる千枚田は、ところどころで土砂崩れの跡が確認された。会によれば、2キロほど離れた山中にある取水口一帯も崩壊。田に水を引くのが困難になっている。

◆「やっと一歩進んだのに、5歩も6歩も下がった」

 海岸沿いの斜面に1004枚の田がある千枚田。地震の影響で、今年は5月に約120枚だけ田植えをした。9月上旬に愛耕会のメンバーのほか、有償で田を借りて耕作体験できるオーナーや、ボランティアも参加して稲刈りをし、来年の作付けに向けて気持ちを新たにしたところだった。  豪雨後に初めて田を見たという愛耕会の山下博之さん(65)は「せっかく直したところが、また崩れてしまった」と肩を落とした。会の白尾友一(ともかず)代表(60)は先行きが見通せない状況に表情を曇らせた。「一生懸命やってきて、やっと一歩進んだのに、5歩も6歩も下がった感じ。何とかしたい気持ちはあるけど、今は何も考えられない。これから会のメンバーら皆と相談したい」  同地区は21日朝から孤立し、同パークに住民約15人が避難してきたほか、復旧工事の関係者数人が取り残された。その1人、姉川俊寛さん(43)は他の工事関係者と共に、車中泊を続けながら重機を使って周辺の土砂を取り除き、早期の開通につなげた。姉川さんは「道が通らないと、ライフラインも復旧しない。住民が困らないよう『何もせんわけにはいかん』という思いだった」と振り返った。(上田千秋)


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