横浜最大の歓楽街・伊勢佐木町の周辺で、客引きに飲食店に連れ込まれて多額の現金を支払わされる被害が相次いだり、路上で男性客をとる「男娼」として金を稼ごうと来日する外国人が目立ったりすることから、神奈川県警が県迷惑行為防止条例を改正し、取り締まりを強化する方針を固めた。来年5月の施行を目指す。

 12日の県議会で、原聡祐県議(自民)が「泥酔客へのぼったくりや男娼が不安感を抱かせている」と繁華街・歓楽街への取り組みについて質問。和田薫・県警本部長が「条例改正に向け手続きを進めている」と答弁した。

 県警によると、現行の条例は、接待を伴う飲食店に特定の人を呼び込む「客引き」を禁止している。改正案では、不特定に呼びかける「誘引」、客を呼び込む目的でうろつく「客待ち」にも警察が中止命令を出せるよう協議する。

 男娼については、条例が「売春類似行為」のための客引きと客待ちを禁止する一方、性別を男性から女性に変更した人による売春類似行為は想定していない。売春防止法も適用できないため、取り締まりが難しかった。そこで、「性別にかかわらず」売春類似行為をするための客引き、客待ちを禁止できるよう協議する。

「パイラー」の手口

 伊勢佐木町に隣接する福富町で昨年被害が多発したのが、「パイラー」と呼ばれる、複数の飲食店と組んで取り分を得るフリーの客引きによるものだった。

 次のような手口だ。まず、客引きらが酔った客を店に連れ込み、アルコール度数の強い酒を飲ませる。酩酊(めいてい)状態に陥った客に高額の請求をし、ATMに連れていって多額の現金を引き出させ、それを受け取るというもの。大半の場合、酩酊状態の客自身がATMで現金を引き出すため、窃盗罪などでの起訴は難しい状況だという。

 伊勢佐木町や福富町を管内に持つ伊勢佐木署によると、客引きや男娼をめぐり、昨年、被害や苦情が多数寄せられたことから取り締まりを強化し、大幅に改善しているという。

 昨年、泥酔客がATMに連れて行かれ、多額の現金を支払わされる被害が280件寄せられ、被害は計1億6400万円に上ったが、パトロールを強化するなどして、今年は30件、1200万円に急減。男娼も昨年、管内で1日最大15人ほどが私服警察官による内偵調査で確認され、口頭で指導を受けるなどしたが、今年は1日最大5人程度に減っているという。

 ただ、いずれも「取り締まりを緩めるとまた増える」(県警幹部)として警戒を続けている。(中嶋周平)

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