先月19日、NHKのラジオ国際放送などの中国語ニュースで、原稿を読んでいた中国籍の48歳の外部スタッフが沖縄県の尖閣諸島の帰属などをめぐって、原稿にはない日本政府の公式見解とは異なる発言を行ったことについて、NHKは10日、調査報告書を公表しました。

報告書によりますと、問題の放送には、基幹職デスクなどが立ち会い、原稿にない発言をしていることに気づきましたが、音声を止めるなどの対応を取ることはできず、その理由について「突然のことで対応できなかった」と話しているということです。

また、この外部スタッフは、中国当局の反応への不安や懸念、処遇への不満を職員に伝えることがあったということで、その発言や主張を踏まえ、事前に備えておけば適切な対応がとれた可能性があったと考えられるとしています。

さらに事案の発生後、放送の訂正の実施や視聴者・国民への適時の説明などにおいても、対応が十全ではなかったとし、こうした事態を招いた背景には、危機意識の乏しさがあったとしています。

こうした責任の所在を明らかにするとして、稲葉延雄会長、井上樹彦副会長、山名啓雄専務理事、中嶋太一理事の役員4人が役員報酬の50%を1か月、自主返納するほか、国際放送担当の傍田賢治理事が10日づけで辞任します。

また国際放送局長を減給とするなど、あわせて5人の職員を懲戒処分にしました。

このほか外部スタッフと業務委託契約を結んでいたNHKグローバルメディアサービスの代表取締役ら2人も、役員報酬の30%を1か月、自主返納するとしています。

稲葉会長は、記者会見で「今回の事案はいわば『放送の乗っ取り』とも言える事態で、自ら定めたNHK国際番組基準に抵触するなど、NHKが放送法で定められた担うべき責務を果たせなかったという極めて深刻な事態であり、重く受け止めています。改めて、深くお詫び申し上げます」と謝罪しました。

今回の問題を受けて、NHKはラジオ国際放送の事前収録への切り替えや「AI音声」の導入検討などに加え、国際放送と、編集体制が強固である国内放送との連携を深めるなどしてチェック・けん制が働くようにするなどの対応策を徹底することで、国際放送に関するガバナンスを強化し、信頼回復に努めていくとしています。

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