修復したピアノの前で写真に納まる調律師の遠藤洋さん(左)、持ち主の渓口裕子さん(右)、倉本沙織さん=8日、石川県穴水町(遠藤さん提供)

 東日本大震災以降、全国各地の被災ピアノを復活させてきた福島県いわき市の調律師遠藤洋さん(65)が、能登半島地震で中規模半壊となった石川県輪島市の住宅で雨や雪にさらされたピアノを修復し、持ち主に送り届けた。遠藤さんは「心の痛みに直面している人のためにできることをしただけだ」と話している。  遠藤さんは被災自治体を通じて修理を要するピアノを募り、渓口裕子さん(77)が50年以上前から大切にしてきたアップライトピアノを手がけることになった。  遠藤さんによると、渓口さんのピアノは、湿気のため弦をたたくハンマーの軸に不具合が生じるなどして、鍵盤が重く、音のバランスが崩れていた。7月、いわき市に持ち帰り、修復していた。  渓口さんは今月8日、身を寄せている石川県穴水町の娘倉本沙織さん(52)方でピアノと対面し「柔らかくてきれいな音。修理を諦めていたピアノに再会できて幸せ」と喜んだ。  いわき市の中学校で震災の津波にのまれ、遠藤さんの手で音色を取り戻したピアノは「奇跡のピアノ」と呼ばれている。


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