リニア中央新幹線静岡工区をめぐり、有識者でつくる静岡県専門部会が6日、静岡県庁で開かれ、トンネル工事で発生する残土置き場について議論した。JR東海は主な候補地である「ツバクロ発生土置き場」の直下に断層がある可能性を初めて明らかにした。これまで示してこなかったことに対し、県や委員から「安心、安全に関わる資料はすべて出してほしい」と懸念の声が出た。

 県が2月にまとめた課題は28項目あり、この日は発生土に関する5項目のうち3項目を議論した。これまでに委員からツバクロ発生土置き場について「対岸斜面に断層があり、地震発生時に対岸斜面で深層崩壊が発生する可能性がある」との意見があったことを受け、JR東海が直下に断層がある可能性を示した地質調査の資料を提出した。

 JR東海によると、資料は2018年度にまとめたという。断層が盛り土の計画に与える影響はないととらえ、これまで専門部会に出してこなかった。

 森貴志副知事は「ツバクロの周辺にこれまで説明がなかった複数の断層が示され、1本は真下を縦断している」と指摘した。さらに「情報は最初から出すべきではないか。お互いの信頼関係が損なわれるのではないかと危惧している」と語った。

 JR東海の永長隆昭・中央新幹線静岡工事事務所長は「具体的に議論をするためには細かいデータを見ながら対応することが大事だと考え、断層の可能性がある資料を出した」と説明した。そのうえで「県民の皆様に心配をおかけする可能性があったとして、おわびして反省をしている。必要な状況を適切に示すことを固く約束させていただく」と謝罪した。

 専門部会の森下祐一部会長(静岡大客員教授)は終了後の会見で、「断層が活断層なのかどうか、どういう性質の断層なのかということは現時点でわかっていない」との認識を示した。そのうえで「きちんと調査をしていただき、専門部会で議論していく必要がある」と強調した。(青山祥子)

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