ラッパーのSHINGO★西成さん(52)は、元プロボクサーで俳優の赤井英和さん(65)を親しみを込めて「兄ちゃん」と呼ぶ。年は違えど、ともに生まれ育ったのは大阪市西成区の釜ケ崎(あいりん地域)。快晴の7月末、「大阪で一番ディープなまち」とも呼ばれる地元を2人に歩いてもらった。
西成区全体の8・4%にあたり、「日雇い労働者のまち」としても知られる釜ケ崎。
赤井さんの自宅は、釜ケ崎の大通り沿いにあり、両親は近くの今池市場(閉鎖)で漬物店を長く営んでいた。
近大在学中の1980年にプロデビューした赤井さんは、12連続KO勝ち。「浪速のロッキー」と呼ばれ、地元の今池本通商店会や今池市場の人たちは後援会を作り、試合のたびに観光バスで応援に駆けつけた。
83年には世界タイトルに挑戦。敗れはしたが、小学生だったSHINGOさんにとって、赤井さんは「まちのヒーロー」だった。
今回2人は、応援してくれた今池本通の商店街を訪問。地元の人たちは、突然の来訪にびっくりしつつ、涙ぐみながら赤井さんとハグを交わした。
それを見たSHINGOさんは「やっぱり兄ちゃんはヒーローや」と語った。
2人は日雇い労働者らが集まる通称「三角公園」や、赤井さんが少年柔道教室に通っていた西成署なども回り、思い出を語った。
酷暑なので途中途中で休憩。知り合いの喫茶店で涼んだり、ビールで乾杯したりしながら、まちの人との会話を楽しんだ。
赤井さんと同じ小学校、同じそろばん塾に通った縁もあるSHINGOさん。小学校低学年の頃、銭湯で赤井さんと会話したことがあったという。
深い湯船でゼンマイ式の潜水艦のおもちゃで遊び、大人の股の間をくぐらせていた。
すると赤井さんから「何してんねん。わきまえろ」と叱られ、「あかんことなんや」と学んだという。赤井さんは「まったく覚えていない」と振り返った。(矢島大輔、市原研吾)
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