東京都監察医務院によりますと、ことし6月から8月までの3か月間で、熱中症の疑いで死亡したのは、速報値で40代から90歳以上のあわせて248人でした。

これは去年、6月から9月までの4か月間の192人を大きく上回り、公表されている2006年以降で最も多かった2022年の251人にも迫っています。

年代別では大半が高齢者で、80代が97人、70代が82人、90歳以上が32人、60代が27人でした。

場所別では屋内で亡くなった人が239人と96.3%を占め、この9割近く、死者の全体でみても8割余りにあたる213人はエアコンを使っていませんでした。

エアコンを使っていなかった人のうち、エアコンがあるのに使っていなかったのが155人で、エアコンがない部屋で亡くなっていたのが58人でした。

東京都監察医務院は「亡くなった人は高齢者や一人暮らしの人が多い傾向があり、周囲が体調の変化に気づきにくく、症状が非常に重くなる可能性があるため、注意が必要だ。熱中症による死は予防が可能なので、暑い日はエアコンを使うようにして欲しい」としています。

熱中症疑いの死者 暑さ指数や気温との関連は

死因のはっきりしない遺体を調べている東京都監察医務院は、死亡が推定される日をまとめています。

今回、一人ひとりの推定死亡日を取材し、暑さ指数や気温との関連を調べました。

熱中症疑いの死者は7月の上旬にいったん増えた後、7月下旬の25日から31日までの1週間で改めて急激に増加しています。

熱中症対策としては気温のほかに湿度や日照データも考慮した「暑さ指数」が用いられていて、25以上が「警戒」28以上が「厳重警戒」31以上が「危険」となっています。

東京の都心の暑さ指数が、熱中症警戒アラートのめやすとなる33を上回った7月3日以降、死者は増え始め、最初のピークとなっています。

また、2つめのピークは7月中旬以降にできていますが、この時も都心の暑さ指数は連日、33を上回っていました。

特に26人が亡くなったと推定されている7月29日は、関東北部で40度を超えるなど危険な暑さとなり、東京の都心の最高気温は37.3度、最低気温も29.3度となったほか、東京・練馬区では最高気温は39.3度と危険な暑さとなっていました。

8月も気温や、暑さ指数の高い日が続き、7月下旬ほどの人数ではないものの毎日のように死亡した人がいたとみられています。

認知症の高齢者など ”見守りができる環境づくりを“

認知症や一人暮らしの高齢者の熱中症対策について、認知症専門医で複十字病院認知症疾患医療センター長の飯塚友道医師は「認知症の高齢者は自律神経が正常に機能しなくなり、温度感覚が鈍っているほか、リモコン操作も難しくなることがある。そのため、きちんと水分をとっているか、室内の温度調節は適切か、本人任せにせずに周りの人が気にかけることが重要だ」と指摘しています。

その上で「家族がいないときや、別居している場合に電話だけの指示では難しいこともあり、見守ることができる環境づくりが重要だ。身近な人の協力のほか、ヘルパーや訪問看護を利用して、エアコンを付けているか、間違って暖房をつけていないか、チェックしてもらう環境を整えることも大事だ。都市部はコミュニティが機能しないこともあるので、ひとり暮らしの認知症患者はケアマネージャーと相談して暑い日中は積極的にデイサービスなどの介護サービスを利用すべきだ」としています。

さらに、飯塚医師の病院にもこの夏、多くの認知症の人が熱中症で運ばれているとして「時間や場所、人物を理解する能力が下がる“見当識障害”が進行すると、今の季節が理解できなくなり、夏に冬服を着てしまうこともあって、実際、真夏にセーターを着て病院に来られた方もいる。本人は『暑くない』と言いながら汗をかいていることもある。本人の状況にあわせて例えばタンスを整理し、手近には季節にあった服を置くことが望ましい。今後も暑さは続き、これまでの疲れもある。気を抜かずに家の中を涼しくする大切さを何度も伝えてほしい」と呼びかけています。

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