石川県七尾市中心部の一本杉町に事務所を構える七尾市出身の建築家、岡田翔太郎さん(34)が、能登半島地震で被災した一本杉通りの50分の1の復元模型を作っている。地震から8カ月となり、取り壊される建物も増える中、「震災前の街の姿を忘れないように記憶を保存しておきたい」。ボランティアとともに、新たな街づくりへの一歩を踏み出す。(大野沙羅)

被災前の一本杉通りの復元模型を制作する(左から)岡田翔太郎さん、翔子さん、松下琴莉さん=石川県七尾市で

◆「かつての日常を思い、街への追悼をする」

 600年以上の歴史があるとされる一本杉通り。JR七尾駅前を流れる御祓(みそぎ)川にかかる仙対橋から約450メートルの通りは、国登録有形文化財やモダンな建物が混在する。約40の商店が倒壊するなど大きな被害を受け、あちこちで解体が進む。  「今までの街の姿を形にして、かつての日常を思い、街への追悼をすることが再建への第一歩」。そんな思いを込め、被災前の復元模型の制作に乗り出した。  4月から事務所で働き始めた神奈川県出身の松下琴莉(ことり)さん(23)とともに、全国からボランティアを募集。これまでに東北から九州まで建築を学ぶ学生ら約30人が滞在し、協力して作業を進めている。

◆模型は全長9メートル、建物は約100軒

 建物の写真を撮って間口の長さを測り、専用のソフトで制作した復元模型を印刷して組み立てる。石畳や電柱も再現し、建物は約100軒、全長9メートルになる予定だ。完成後は地域住民に披露するほか、建物を改修したり更地にしたりする際、場所の把握や情報整理に役立てる。  岡田さんは昨年夏、一本杉通りの空き家を改修し、妻の翔子さん(32)と建築デザイン事務所と宿泊施設を開業した。わずか半年足らずで地震に襲われ、宿も壁がひび割れた。近隣商店の改修や再建の相談に乗り、現地入りした建築や防災関係の研究者らに対応。6月には御祓地区で発足した災害復興プラン策定会議の一員に選ばれた。  地道な取り組みを続ける岡田さんは意気込む。「いろんな時代の建物が並ぶのも面白い。皆で新しい街の姿を考えていきたい」 

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