新型コロナウイルスワクチンの保管に必要とされた超低温・低温の冷凍庫が、「第二の人生」を歩み始めている。国が全国の自治体に無償配備したが、全額が公費負担の特例臨時接種が終わった今、活用法は自治体にゆだねられている。京都府内の実態を調べると、「捨てた」という自治体がある一方で、活用に知恵を絞った自治体もある。

 ファイザー製のコロナワクチンはマイナス75度の超低温、モデルナ製はマイナス20度の低温冷凍庫での保管が必要とされ、国は約90億円をかけて2万台以上を購入し、全国の自治体に配備した。

 耐用年数は10年程度とされることから、厚生労働省は昨年12月の事務連絡で、廃棄処分とする選択肢を認めつつも、病院や研究機関へ譲渡するなど、有効活用を模索するよう自治体に求めた。

 京都府健康対策課によると、国から府内26市町村には計274台、府には31台の超低温・低温冷凍庫が配備された。

 府内で最も多く配備されたのは京都市の146台で、その大半を市内の医療機関や、京都大や府立大など市内の大学に無償譲渡した。「希望者が多く、行き渡らなかった団体もあった」と市医療衛生企画課の担当者。約2倍の「競争率」だったという。

 ツインバード社製の可搬式冷凍庫については、市消防局が4台使うことになった。消防・救急隊員の熱中症対策として今夏からアイスベストを導入しようとしていた矢先のことで、奥田里衣子・総務課担当課長は「アイスベストを冷却する冷凍庫を購入しなければならないタイミングで、助かった。現場の隊員からも暑さが和らぐととても好評です」と話す。

 一方、市内の医療機関などに打診したものの、引き取り手が見つからなかったという南丹市は、フリマアプリ「メルカリ」に目をつけた。1台あたり数十万円する超低温・低温冷凍庫だが、メルカリの「相場」を勘案しつつ、1台8万円という格安で出品した。「南丹市役所まで引き取りに来ること」という条件もつけたが、3台ともあっという間に売り切れた。市は今後も不用備品の販売にメルカリを活用し、資源循環をめざす方針だ。

 福知山市は国から受け取った9台のうち2台を飲食業者に5千円で売却した。故障のため廃棄した3台を除く残り4台は、ワクチン保管用として市役所内部や市民病院などで活用する。

 他にも様々な使い方がある。木津川市は国から配備された8台のうち3台を、車にひかれるなどした動物の死骸や駆除した有害鳥獣を処分場に運搬するまでの一時保管場所として活用。向日市は、市浄水場の水質検査で採取したサンプル保管などに活用しているほか、熱中症予防のため、市立保育所で保冷剤の冷却に使っている。

 一方、宮津市は国から配備された1台を、故障はしていないものの廃棄処分とした。「コロナ禍も終わり、もう使わないだろうということです」と担当者。(日比野容子)

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