愛媛県南部の大洲市大川地区に一軒の古民家カフェがある。店名は「Chez(シェ)利太郎」。しょうゆの醸造元だった建物を改築したカフェだ。運営するのはNPO法人理事長の宮本幹江さん(62)。2018年の西日本豪雨で被災した地元を元気づけたいとの気持ちから開店にこぎ着けた。宮本さんは「誰でも迎え入れる地域の家のような場所にしたい」と意気込む。(共同通信=熊木ひと美)
宮本さんは大川地区出身。高校卒業後は東京で編集者として働く傍ら、自治体の町づくりに携わっていたが「地元の過疎化はずっと気になっていた」。事業が軌道に乗ったタイミングで30年ぶりに愛媛へ帰郷。2014年に母校の大成小が廃校し、地区に小学校がなくなってしまったのを機に町おこしを始めた。
仲間と話し合う中で、昔のしょうゆ屋の建物を活用する案が浮上する。「開放的な造りだったので、地域の交流の拠点にぴったり」。2017年夏にNPO法人「おおなる工房」を立ち上げた。
しかし2018年の西日本豪雨で、ダムの緊急放流後に氾濫した肱川沿いにある大川地区は壊滅的な状態に。「まさにぼうぜん自失だった」と宮本さん。
一方で「今こそ地域を元気づけたい」との思いもあり、地区の人々の力も借りながら2020年8月にオープンした。店名はしょうゆ屋の創業者の名前にちなんだ。
カフェの名物は週替わりの主菜を選べるランチセット。宇和海の魚や国産肉を使用するのがこだわりだ。県外からの観光客も多く、宮本さんは「大川を知ってもらうきっかけになっている」と手応えを感じている。
より長く地域に滞在してほしいと、秋からは交流型の宿泊施設としても観光客を受け入れる。「訪れた人と一緒に大川の生活を楽しんでいきたい」と笑顔を見せた。
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