東京電力福島第1原発では昨年10月に、作業員2人が被ばくする事故が発生して以来、トラブルが相次ぐ。2月には、斎藤健経済産業相が東京電力の小早川智昭社長を呼び出し、再発防止の徹底を指導。それでも問題は続いた。東京電力は4月、全作業約1000件の手順などの点検を開始。問題がないと確認した作業から順次再開させていた。ただ、点検中の5月にも、作業員が転落し骨折する大けがを負った。東京電力は、続発するトラブルについてリスク評価に甘さがあったことを要因に挙げた。斎藤経産相は7月、福島県内の会合で陳謝し「地元の信頼を得ながら廃炉作業を進めるよう指導する」と述べた。  厚生労働省によると、事故後に構内で発生した労災事故の認定件数は2011年度から23年度までの13年間で、計365件に上る。年度別の最多は14年度の59件。認定は、けがや熱中症、被ばくしで白血病やがんを発症した作業員ら。被ばくによる初認定は15年の1件で、その後に少しずつ出始め、22、23年度がともに3件になっている。

①汚染水飛び散り、作業員被ばく

 昨年10月25日午前10時40分ごろ、汚染水を浄化する多核種除去設備で、作業員5人が洗浄廃液を浴び、2人が病院に搬送され、入院。2人のうち、20代男性の外部被ばく線量は6.6ミリシーベルト、40代男性は1.6ミリシーベルト。配管内を硝酸水で洗浄中、内部の炭酸塩と反応して発生したガスの勢いで、洗浄廃液をタンクに送る仮設ホースが外れ、飛び散った。写真(東京電力提供)の上から伸びるホースが外れた。

① 被ばく事故の現場。タンク周囲に遮へい物はなく、上から延びるホースが外れて廃液が飛散した

②汚染水が大量漏えい

 2月7日午前8時55分ごろ、作業員が汚染水の除染設備が入る建屋屋外の排気口から、汚染水が漏れているのを見つけた。漏出量は1.5トン(セシウム約66億ベクレル)に上った。作業員が誤って弁を開けたまま、設備を洗浄したことが原因だった。 

② 除染設備がある建屋外に漏れ出た洗浄廃液の水たまり

③チップから大量水蒸気で火災報知器

 2月22日午前3時35分ごろ、伐採木のチップを貯蔵していた雑固体廃棄物焼却設備で火災報知機が作動。チップが発酵し大量の水蒸気が発生。注水により、チップと水の回収に追われている。

④鉄骨に指挟まれ骨折

4月22日午前8時45分ごろ、2号機の使用済み核燃料を取り出すために、建屋に隣接する構台を建設する作業中、鉄骨に右中指を挟み骨折する大けがを負った。

⑤電源ケーブル損傷で停電、作業員はやけど

 4月24日午前10時45分ごろ、2号機の西側約700メートルで作業員が掘削中に、誤って電源ケーブルを傷つけ、構内の一部で停電。処理水の海洋放出が約6時間半中断したほか、復旧作業の過程で事故時の司令塔となる免震重要棟の電源も喪失した。作業員は顔や右腕に重いやけどを負い、救急搬送された。  作業員はコンクリート舗装を掘削していた。東電は、電源ケーブルの上部にある砂利が見えたら作業を止めることを計画していたが、実際には砂利はなくそのまま掘り進めたことが原因だった。

⑥落し骨盤骨折

 5月23日午前8時45分ごろ、作業員がコンクリートミキサー車から生コンを出すために使う作業台(高さ約1メートル)から転落。骨盤を骨折する大けが負った。伐採機を焼却した後の灰などを保管する固体廃棄物貯蔵庫を建設するための作業中だった。

⑦6号機プールで冷却10時間停止

 6月18日午前8時35分ごろ、6号機のタービン建屋で電源のブレーカーが落ち、使用済み核燃料プールの冷却が約10時間止まった。電源盤から伸びる板状の導体がショートし、ダクト内で焼けて溶けていた(写真、東京電力提供)。

⑦ 東京電力福島第1原発6号機のタービン建屋で焼損した板状の導体(手前)=19日(東京電力提供)

⑧2号機デブリ微量採取が延期

 8月22日に着手予定だった2号機の溶け落ちた核燃料の微量採取計画で、装置を格納容器に伸ばすために数珠つなぎにされたパイプ(写真、東京電力提供)5本の順番を誤って配置し、着手が延期された。東京電力は「初歩的なミス」とした。

⑧ 押し込みパイプの設置状況(東京電力ホールディングス株式会社提供)



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