現行の健康保険証の新規発行が廃止されるまで、あと3カ月。 東京新聞「ニュースあなた発」など読者とつながる報道に取り組む全国18の地方紙は、マイナンバーカードに保険証機能を持たせた「マイナ保険証」に関する合同アンケートを実施した。 現行の保険証を残してほしいという意見が8割を占め、依然として廃止への不安や疑問が根強い実態が浮かんだ。(デジタル編集部・福岡範行)

マイナ保険証の合同アンケート 全国の18紙が8月9~18日に通信アプリLINE(ライン)などで呼びかけ、1万2007人から回答があった。多様な声を聞き取るのが目的で、無作為抽出の世論調査とは異なる。
回答者のうちマイナカードを持っている人は64.4%(全国では、7月末時点で74.5%)、保険証として使っている人は26.3%、今後使う予定の人は15.6%だった。

◆マイナ保険証一本化の支持は少なく

アンケートでは、現行の保険証廃止の政府方針に対し、
(1)現行の保険証をなくしてマイナ保険証に一本化
(2)現行の保険証を残して選択制に
(3)現行の保険証を残してマイナ保険証の導入をやめる

のうち、どれを支持するかを尋ねた。 (3)マイナ保険証の導入反対と(2)選択制への支持が、いずれも4割ほどで並んだ。(1)マイナ保険証への一本化を支持した人は2割だった。 マイナ保険証の導入に反対する意見には「任意のはずのマイナカードを強制されているようで、納得できません」(50代女性)などがあった。 選択制を求める意見には「認知症の親はマイナカードを作れません」(50代男性)などがあった。 マイナ保険証を使う人でも、47.8%は選択制を支持していた。 マイナ保険証への一本化を支持する意見には、「効率化が図れるので、いち早く進めていただきたい」(40代男性)などがあった。

◆マイナ保険証使う人も約6割が「情報漏れ不安」

自由記述では「紛失時のリスクや手続きが心配」(60代女性)、「災害時や停電など、使えないときはどうするの」(60代女性)といったトラブル対応への不安や疑問が目立った。 「自分の情報が漏れないか不安だ」という問いには、「当てはまる」「やや当てはまる」と答えた人が8割弱いた。マイナ保険証を使う人でも59.8%を占めた。 現行の保険証は、新規発行が廃止される12月2日以降も最長で1年間、使い続けられる。しかし、アンケートでは回答者の1割が「12月2日から使用できなくなる」と誤解していた。

◆マイナ保険証 使わない理由は?使う理由は?

カードを持っていても保険証として使わない人たちに理由を尋ねると、複数回答で「従来の健康保険証が使いやすい」(63.7%)、「情報漏えいが不安」(63.0%)が多かった。 マイナ保険証を使う人たちの理由は、「従来の保険証が廃止されると聞いたから」(48.0%)が最多。「病歴や薬歴を説明する手間が省ける」(38.4%)が続いた。

◆「国民の不安を払拭できていない」

名古屋大の稲葉一将教授(行政法学)の話 マイナ保険証が基本になる新しい制度の正確な情報の周知が十分ではなく、国民の不安を払拭できていないと感じた。 1年前に現行の健康保険証を廃止する法改正が議論されていたときから、あまり傾向が変わっていない。 疑問や不安が解消されないまま保険証を廃止していいのかや、猶予期間の延長を国会は改めて検討していいのではないか。 【関連記事】マイナ保険証「必須」と勘違い「私も夫も知りませんでした」 今もなお誤解や疑問 アンケートで浮かぶ周知不足
【関連記事】「最後の紙の保険証」に嘆く高齢者 マイナカードと一体化まで4カ月 「紛失したら…」「申請すら行けず」     ◇ 合同アンケートの回答者の年齢層は、30代以下が9.8%、40~60代が71.6%、70代以上が18.6%だった。 現行の保険証廃止への考えでは、次のような意見もあった。 マイナ保険証の導入に反対する意見
「現在の保険証で困っていないのになぜ多額の予算をかけて変更しなければいけないのか」(50代女性)
「マイナカードは任意だから。現場の混乱を考慮しない姿勢が民主的ではないと思う」(60代女性)
「マイナカードが強制であると間違えるよう誘導を行っており憲法違反と思う」(30代男性) マイナ保険証と現行保険証の選択制を望む意見
「母は高齢者です。マイナカードで病院に通うのは難しいと思う」(60代女性)
「みんなが便利で必要と思えるなら自然とマイナ保険証の使用も増えると思う」(50代男性)
「資格確認書は発行の負担が増える。紙の保険証も使えますと言えばすむ」(70代男性) マイナ保険証への一本化を望む意見
「デジタル化によるメリットが利用者、病院、政府ともに大きいと思う」(70代男性)
「業務を高効率化できれば、人員不足への対策や税金の節約につながる」(30代男性)
「個人情報漏えいの可能性は今の保険証だってあると思う。便利になるならどんどん進めてほしい」(50代女性) 合同アンケートを実施した18紙は次の通り。 東奥日報(青森)、岩手日報、河北新報(宮城)、秋田魁新報、上毛新聞(群馬)、東京新聞、神奈川新聞、新潟日報、北陸中日新聞(石川)、福井新聞、信濃毎日新聞(長野)、岐阜新聞、京都新聞、中国新聞(広島)、西日本新聞(福岡)、熊本日日新聞、南日本新聞(鹿児島)、琉球新報(沖縄)

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