9月1日の防災の日に合わせ、東京新聞は島しょ部を除く東京都内の53区市町村に首都直下地震の備えについてアンケートを行った。避難所の受け入れ人数は32区市町が住民の2割未満にとどまり、食料の備蓄は11区が1日分しかなかった。住民が殺到すると、避難所の過密や食料の不足が起こり得る。大半の自治体は「在宅避難」を呼びかけており、専門家は自治体に対し、家庭での備蓄支援を進めるよう求めている。(原田遼)

 首都直下地震 30年以内に70%の確率で起こるとされ、東京都は都心南部、都心東部、多摩東部など震源ごとに5類型で被害想定をしている。最悪の想定は都心南部を震源とするマグニチュード(M)7.3級の地震で、区部の6割が震度6強以上に見舞われ、冬の夕方に発生すると死者6148人、建物被害19万棟、避難者数299万人に上るとする。広範囲で停電や断水があり、生活必需品の品薄、空調やトイレが使いづらい状況は1週間以上続く。

 東京新聞では大地震発生時、自宅に被害がなくても、住民が不安などを理由に避難所に来る可能性を考慮。各自治体の避難所の合計収容人数を居住人口(7月1日時点)で割り、避難所に入れる割合を算出した。都によると、人口に対する収容率についての法的基準はない。

東京スカイツリーと東京駅周辺のビル街

 集計の結果、区部では13区で2割未満だった。最低の9%だった豊島区の担当者は「区の想定避難者数と比較すれば、9割収容できる。足りなければ、区の多目的施設や高校を開放する」と説明した。唯一、3割を超えた荒川区(38%)の担当者は「高齢者や要配慮者が近くの避難所に行けるように公共施設をフル活用する」と話した。  多摩地域では奥多摩町(6%)が最小。檜原村(106%)は住民全員が避難所に入れる。新宿、台東両区と東村山市は収容人数は非公表だった。

◆世田谷、江戸川区など11区「避難所の食料備蓄は1日分」

 食料備蓄の日数は世田谷、江戸川など11区が「避難所の避難者1人当たり1日分」と回答。世田谷区は「2日目以降は都や国の物資が届く想定」とした上で、「区内で最も人口が多く、備蓄の倉庫が足りない」と事情を語った。対策として本年度、1人3000円相当の保存食や防災用品を選べる「防災カタログギフト」を全戸に配った。

◆大半の自治体が「在宅避難」を推奨

 倒壊や火災のおそれのない自宅で生活する在宅避難は、全23区と25市町が推奨。「避難所不足や感染症リスクの軽減につながる」(文京区)、「発災後72時間は人命救助が優先。救援物資が十分行き届くとは限らない」(墨田区)などの理由だった。  東京大先端科学技術研究センターの廣井(ひろい)悠教授(都市防災)は「地震後しばらくは物流のまひなどで店舗から食料が消える可能性もある。自宅が安全でも、自宅に食料がなかったりして住民が避難所に殺到することもあり得る」と指摘。「カタログギフト事業などを通じ、平時から自治体が家庭内の備蓄の啓発・支援をしてほしい」と強調した。

◆東京都「家庭用備蓄は3~7日分を」

 東京都は、3〜7日間の食料や生活用品の家庭内備蓄を推奨する。  全戸に配布している防災ブックでは、4人家族の目安として「水1人1日3リットル」「無洗米4キロ」「レトルトご飯27食」「レトルト食品9個」「携帯トイレ・簡易トイレ45回分」「生理用品30個セット」など約50品目を紹介している。  また、ウェブサイト「東京備蓄ナビ」では家庭構成に合わせて、必要な備蓄を検索できる。 

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