犯罪被害者の支援をワンストップで対応する取り組みが進み出す。警察庁の有識者検討会が25日、司令塔となる役職を都道府県に配置するよう求めた。相談先や対応する組織はバラバラでどのような支援を受けられるか分かりづらかった。窓口を一元化し被害者の負担を軽減する狙いがある。実効性を高めるには人材育成が課題になる。

検討会は被害者支援団体や学識者、犯罪被害者遺族らで構成され、2023年9月から支援の強化策について議論した。25日にまとめた報告書は被害者らが支援を活用しやすくする仕組みづくりに重点を置いた。

支援内容は事件直後の心身のケアや公判への参加、給付金など多岐にわたる。被害者によってニーズは異なり、相談先も都道府県や市区町村、民間団体などに分かれていた。

事件によって精神的なダメージを受けるなか、被害者にとって複数の窓口に問い合わせる負担は小さくない。それぞれの支援機関や団体に被害状況の説明を繰り返すことは、二次被害につながるとの声もあがっていた。

報告書は、一つの機関に相談すれば一元的に支援メニューを活用できる「ワンストップサービスの実現」を提言した。柱として、支援計画の策定や進捗について統括する「犯罪被害者等支援コーディネーター」を各都道府県に配置するよう求めた。

コーディネーターは都道府県職員を想定している。面談を通じて被害者が置かれた状況を聞き取り、必要に応じて自治体や警察などで構成する支援調整会議を開催。会議で支援内容や実施状況を確認する。

警察庁の担当者は「被害者のニーズに合った支援を切れ目なく提供するため、ワンストップサービスが全国的に浸透するよう呼びかけたい」と話す。

課題は担う人材の確保だ。コーディネーターには精神的なケアや支援メニューの選定に当たれる専門知識が求められる。検討会は国に対して、人材育成に向けた研修や先進的な取り組みを周知する手引の作成を促した。

都道府県の財政状況に差があることなどを踏まえ、コーディネーターの配置費用などについても国による補助の検討を求めた。

給付金を引き上げ、弁護士による一貫支援も

犯罪被害者への支援は拡充される方向にある。警察庁の別の有識者会議は25日、被害者や遺族らに国が支給する「犯罪被害者等給付金」の支給額を引き上げる報告書をまとめた。

警察庁は6月にも関連法令を改正し、現行制度で最低320万円とされる給付額をおおむね1000万円超に引き上げる方針を示す。施行後に発生した事件について新たな計算式が適用される。

現行の給付額は被害者の事件前の収入に応じた「基礎額」に、その収入に頼っていた家族の数に基づく倍数を掛けて算出する。被害者が幼い子どもなど収入がない場合遺族は十分な給付金を受けられないといった課題があった。

殺人や性犯罪などの被害者や遺族を早い段階から一貫してサポートする「犯罪被害者等支援弁護士制度」の創設を盛り込んだ改正総合法律支援法も18日に成立した。新制度は2026年中までに導入される見通しだ。

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