知的障害がある30代の女性が、東京都板橋区の障害者福祉施設で、当時の施設長から性的虐待を受けたとして、施設長だった男性と施設を運営していたNPO法人「なないろ」(旧・はらから東京の会)に損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁(新谷祐子裁判長)は26日、性的虐待があったと認め、男性と法人に計180万円の賠償を命じる判決を言い渡した。
判決によると、男性は遅くとも2015年から19年まで、作業所でほぼ毎日、女性の臀部(でんぶ)や下腹部を触り、抱きつくこともあった。15年7月には女性の性器を触るなどした。一方で、女性からほぼ毎日抱きつかれ、キスをされることもあったという。
判決は、男性が性的欲求からこれらの行為をしたとは認められないものの、日常的・自発的に触っていることなどから、わいせつな行為と判断。男性が、女性には性的な行為に同意する能力に制約があることを認識し、性的部位への接触を避けようとした形跡がない点もふまえ、違法とした。
また、法人が、女性の成育歴などを記して区に提出した報告書を、法人の会員らに送った行為についても「プライバシーを侵害する行為で違法」とした。
法人側は、女性の提訴や、施設の元職員による報道機関への情報提供で名誉を傷つけられたとして、女性や元職員らに賠償を求めていたが、地裁は違法性はないとして棄却した。
原告の女性は、判決後の会見で「ほっとしている。相手の主張を覆せてよかった」と語った。代理人の坂本千花弁護士は「知的障害のある人が被害者の場合、被害状況を的確に訴えることができず、エスカレートしてしまうことがある。裁判所が丁寧に事実を認定してくれた。非常に意義がある判決だ」と評価した。
NPO法人・なないろは「当方の主張が認められず非常に残念だ。判決文の中身を精査して今後の対応を検討したい」とした。(米田優人)
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