長崎は9日、原爆投下から79年となる原爆忌を迎えます。平和公園では犠牲者の追悼行事が催されます。イスラエルの招待見送りをめぐり、米英の大使らは式典に出席しない考えを示しました。被爆地の動きを追います。(タイムスタンプは日本時間)
連載「置き去りの被爆者」
原爆に遭いながら、被爆者として認められない人たちがいます。「被爆体験者」。置き去りにされ、救済を求めて声をあげ続ける人々の思いとは。
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■■■8月8日■■■
19:00
宗教・宗派を超えた慰霊祭 700人が追悼
宗教や宗派の違いを超えて平和を祈る原爆殉難者慰霊祭が8日夜、長崎市松山町の爆心地公園であった。県内の宗教関係者でつくる県宗教者懇話会が主催。1973年から毎年8月9日の前夜に開かれ、今年で52回目となる。
仏教やキリスト教などの関係者約700人が参加し、式は日没直前の午後7時に始まった。
原爆が開発されたロスアラモス研究所がある米ニューメキシコ州のカトリック代表や、ウクライナ正教の司祭のほか、イスラエルとパレスチナから来日した学生も出席。原爆の犠牲者を追悼した。
17:00
献花に76カ国 米英の姿はなし
長崎市内の爆心地公園で8日に行われた、各国大使らによる献花には、翌日の平和祈念式典に参列する約100カ国のうち、76カ国が参加した。米英の外交官の姿はなかった。
長崎市に対し、米国などと共に、イスラエルを招待国から除外した場合、「我々もハイレベル(高官)の参加が難しくなる」との書簡を送っていたドイツは献花に訪れた。
取材に応じたティルマン・シュミット=ノイアーブルク公使参事官は、長崎市がイスラエル大使を招待しなかったことについて、「ロシアや(同盟関係にある)ベラルーシと同じように扱うことは適切でない」とコメント。「式典は平和のメッセージを伝える場所だ」として、それ以上の発言は避けた。
同じく書簡を送ったイタリアは総領事が献花予定だったが、欠席した。
17:00
国連の軍縮部門トップ中満氏「主催者の判断を尊重」
国連事務総長の代理として9日、平和祈念式典に出席する国連の軍縮部門トップの中満泉事務次長が8日、長崎市で鈴木史朗市長らと面談した。
面談後、取材に応じた中満事務次長によると、市長が広島市長と共に参加したスイス・ジュネーブでの核不拡散条約(NPT)再検討会議の準備委員会が話題になったほか、被爆80年を迎える来年に長崎で開かれる予定の平和首長会議についても話したという。
式典にイスラエルが招待されず、米英の駐日大使らが欠席を決めたことについては、鈴木市長から「政治的に受け止めた国に直接何らかの形で説明をする」と話があったという。
中満事務次長はイスラエルを招待しなかったことについて、「主催者の判断を尊重する」とし、米国など核保有国の大使が欠席を決めたことについては「大使のご判断」と述べるにとどめた。
式典については、「慰霊、追悼をし、国連にとっては軍縮を進めていく再確認の場として臨みたい」と話した。
16:30
市役所に励ましや批判の電話多数
長崎市で9日に行われる平和祈念式典にイスラエルが招待されなかったことを受け、米英の駐日大使らが式典の欠席を決めたことについて、長崎市役所に、応援する声や批判する声などが電話やメールで多数寄せられている。
市原爆被爆対策部調査課によると、7日夕、主要6カ国と欧州連合(EU)が長崎市に対し、イスラエルを招待国から除外したら「我々もハイレベル(高官)の参加が難しくなる」と書簡を送っていたことなどが報じられると、市役所に電話やメールが殺到。8日も電話が鳴りやまない状態となっている。
内容としては、「市の決定にお礼を言いたい」「負けないでほしい」といった応援や励ましの声と、「なぜイスラエルをロシアと同列に扱い招待しないのか」という批判の声があるという。件数は数えていないが、担当者は「体感としては賛同する声の方が多い」と話す。
16:20
「イスラエル除外に反対の国々に感謝」
ギラッド・コーヘン駐日イスラエル大使は8日、長崎市の平和祈念式典に自らが招待されなかったことを理由に、米英の駐日大使らが欠席する決定をしたことについて、「イスラエルとともに立ち、長崎平和祈念式典からのイスラエル除外に反対することを選んだすべての国々に感謝の意を表したいと思います」との声明を出した。自らのX(旧ツイッター)に投稿した。
コーヘン氏は、さらに「私たちとともに歴史の正しい側に立っていただき、ありがとうございます」とも述べた。
16:00
大使館関係者、次々と原爆落下中心地碑前で献花
長崎市にある爆心地公園には、各国の大使館関係者が次々と訪れ、原爆落下中心地碑前で献花を行った。同市の今月2日のまとめでは、9日、平和公園で催される平和祈念式典には、過去最多の約100カ国・地域の大使館関係者が参列する予定という。
11:02
韓国人慰霊祭「同胞のみたまに哀悼の意を捧げる」
長崎で原爆の犠牲になった韓国人を悼む慰霊祭が、長崎市の平和公園の「韓国人原爆犠牲者慰霊碑」前でおこなわれた。出席者は慰霊碑へ向かって献花し、原爆が炸裂(さくれつ)した時刻の午前11時2分に黙禱(もくとう)を捧げた。
慰霊碑の案内文には、長崎の原爆で、数千~1万人ともいわれる朝鮮半島出身者の命が奪われたと記されている。
主催者を代表して韓国民団長崎県地方本部の朴正煥(パクジョンファン)団長は「79年前、原爆の犠牲になられた全ての方々、特に異国の地、長崎で犠牲となられた韓国人同胞のみたまに、心から哀悼の意を捧げます」とあいさつした。
慰霊祭には、駐福岡韓国総領事館の朴建燦(パクコンチャン)総領事、核兵器廃絶を訴える高校生平和大使と高校生1万人署名活動のメンバーらも出席した。
11:00
公明・北側副代表は「非常に残念」
公明党の北側一雄副代表は記者会見で、長崎市での平和祈念式典に英米などの駐日大使が欠席することについて、「いま国際情勢をみると非常に緊張が高まっている。断じて核兵器の使用があってはならない。核廃絶に向けて、しっかりイニシアチブを日本がとっていかねばならない。そういう意味で、長崎の式典に主要な国の大使が参加されないのは非常に残念」と述べた。「地元がイスラエル大使を呼ばなかった理由は、むしろ不測の事態があってはいけない、ということらしいが、必ずしもそういうことがご理解いただけなく、結果として主要な国々の大使が出られないのは非常に残念だ」とも語った。
10:30
林官房長官「式典は長崎市主催で、コメントする立場はない」
長崎市が9日の平和祈念式典にイスラエルの招待を見送り、米英両国の駐日大使が欠席を決めたことについて、林芳正官房長官は8日午前の記者会見で「式典は長崎市主催の行事であり、政府としてコメントする立場にはない」と述べた。主要6カ国と欧州連合(EU)の駐日大使らが7月、イスラエルの除外に懸念を示す書簡を長崎市に送っていたことについては政府として「認識している」としたが、核保有国を含む大使の式典欠席については「コメントする立場にはない」と繰り返し、論評を避けた。
長崎市は今年、ウクライナに侵攻したロシアや同盟関係にあるベラルーシに加え、イスラエルについても「式典において不測の事態が発生するリスクが懸念される」(鈴木史朗市長)として招待を見送った。林氏は「式典に誰を招待するかは主催者である長崎市において判断されたものだ」と強調。政府と長崎市との調整については「平素より事務的なやり取りを行っており、その中で外務省から国際情勢などについて説明を行うことはある」などと述べるにとどめた。
10:30
立憲・長妻政調会長「政府の関わり、開示して」
立憲民主党の長妻昭政調会長は記者会見で、米英などの大使らから長崎市への書簡について、「長崎市と政府がどういうふうに関わってどんな話し合いがあって、どういう結論になったのかは、我々も一定の関心がある。必要に応じて政府も開示をしてほしい」と語った。
10:03
長崎市長、イスラエル招待見送りに「政治的な理由ではない」
長崎市で9日に行われる平和祈念式典にイスラエルが招待されなかったことに対し、米英の駐日大使らが式典の欠席を決めたことについて、長崎市の鈴木史朗市長は8日朝、「(招待を見送ったのは)政治的な理由ではない。私の判断の真意が伝わっていない」などと語った。
鈴木市長は、米英など主要6カ国と欧州連合(EU)の駐日大使らから7月25日に、イスラエルを招待しないことを「憂慮」する内容の書簡を受け取ったことを認めた。そのうえで、大使側に口頭で説明を行い、理解を求めたことを明らかにした。
イスラエルを招待しなかったことについては、「平穏、厳粛な雰囲気のもとで円滑に式典を実施したいというのが理由だ」と改めて強調した。
09:00
犠牲者に捧げる水くみ「語り継いでいけたら」
長崎市松山町の平和公園にある平和の泉では、市内の小中高校生が、9日の平和祈念式典で原爆犠牲者に捧げる水をくんだ。
泉の石碑には被爆した少女の手記から《のどが乾いてたまりませんでした》《どうしても水が欲しくてとうとうあぶらの浮いたまま飲みました》といった言葉が刻まれている。
市立西泊中3年の梶魁亨(かいと)さん(15)は「ほしくても飲めなかった人たちに水を届けたいと思って参加した」。
市立長崎商業高校2年の渡辺弥優(みゆ)さん(16)は十数年前に亡くなった曽祖母が被爆者で、自身は被爆4世にあたる。とても優しいひいおばあちゃんだったが、被爆体験はほとんど口にしなかった。
「それくらいつらい体験だったのだと思う。伝えていける人が減ってきている。自分たちもSNSなどを使って原爆のことを語り継いでいけたら」
06:30
パレスチナの駐日代表、米英大使欠席に「被爆者への侮蔑だ」
駐日パレスチナ常駐総代表部のワリード・シアム代表は8日、イスラエル大使が招待されなかったことを理由に、米英の駐日大使らが長崎の平和祈念式典を欠席する決定を下したことについて、「がくぜんとしている。被爆者とその家族に対する深い侮蔑だ」と批判した。
滞在先のエジプトのカイロから、朝日新聞とのオンラインインタビューで答えた。
また、米英など主要6カ国の駐日大使らが、長崎市長に、イスラエル大使を招待しないことを「憂慮」する内容の書簡を送ったことについて、「長崎市に対して(平和への)価値観を妥協させるよう圧力をかける行動だ。失望し、憂慮している」と語った。
「暴力と抑圧を永続させようとする人々なしで式典を挙行することは、より大きな意味を持つだろう」
04:30
米ホワイトハウス報道官「この件はフォローしていない」
米ホワイトハウスのジャンピエール報道官は7日の記者会見で、エマニュエル駐日米大使が長崎市で開かれる平和祈念式典を欠席することについて問われ、「この件はフォローしていない」とし、「何が起きたのか、確認したい」と述べた。
■■■8月7日■■■
11:30
米国大使も長崎の平和式典を欠席へ
長崎市で9日に開かれる平和祈念式典に、エマニュエル駐日米大使が出席を見合わせることが7日午前、明らかになった。在福岡米領事館は、アシーケ首席領事が米政府代表として式典に出席すると発表した。
関係者によると、エマニュエル大使はもともと式典に参列する予定だった。ところが、長崎市が今年、ウクライナに侵攻したロシアや同盟関係にあるベラルーシに加え、パレスチナ自治区ガザへの攻撃を続けるイスラエルを式典に招待していないことが分かった。英国大使はイスラエルの不招待を理由に式典の欠席を決定。エマニュエル大使も、同様に出席見合わせを決めたという。
エマニュエル大使は、6日に行われた広島市の平和記念式典には出席していた。
■■■8月6日■■■
18:00
英大使「長崎の式典、出席しない」 イスラエル招待見送り理由に
英国のジュリア・ロングボトム駐日大使が広島市内で記者団の取材に応じ、9日に長崎市で開かれる平和祈念式典には出席しない意向を示した。
ロングボトム大使は「長崎の式典には出席しません」と言明。長崎市が、ウクライナへの侵攻を続けるロシアやベラルーシとともに、式典にイスラエルを招待しなかったことを理由に挙げた。
大使は「ウクライナという独立国に侵略したロシア・ベラルーシと違い、イスラエルは自衛権を行使している。同様の扱いをしては誤解を招く」との考えを示した。
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