警察庁は1日、能登半島地震における警察の活動を検証して得た課題と、それを踏まえた対策をまとめた。道路が寸断され、被災地への救助部隊の派遣に困難さを伴ったのを教訓に、悪路を走れる車両の配備や、到達ルートを探す専門班を警察庁を設置することなどを検討する。偽情報対策のための体制整備も進める。1日で震災から7カ月となった。

 警察庁は4月に警備運用部長を長とするワーキンググループを設置。能登半島地震における各分野の活動を振り返って課題を整理し、今後の大規模災害時の活動に生かすための対策をまとめた。

 今回の震災では、半島内の各所で道路が寸断されるなどしたため、輪島市など被害の大きい被災地に警察の救助部隊が迅速に入るのが難しかった。警察の小型車両は発災翌日の1月2日に到着したが、十分な資機材を積んだ大型車両の到着は同月4日だったという。これを教訓に、多くの資機材を積載でき、悪路の走行が可能なバン型四輪駆動車の配備を検討する。倒木などを除去するためのカッターやチェーンソーといった小型軽量の電動資機材や、防寒用装備なども配備するという。

 道路寸断に関する情報は警察庁に断片的に入ってきたものの、集約する体制がなくルートの解明に時間がかかったことから、災害時に警察庁に設置される総合対策室に「被災地ルート解明班」を新設。現地からの情報を集約、分析し、到達できるルートを特定し、警察の部隊や関係機関と共有するようにする。

 震災時には、うその救助要請などネット上での偽情報や誤情報が相次いだ。このため、警察が把握した偽情報などをSNS事業者に提供し、削除などの対応を迅速にとってもらう枠組み作りに取り組む。

 被災地では警察が避難所や無人になった街頭に約千台の防犯カメラを設置した。今回の対策では、防犯カメラの設置を担う部隊も新設する。各都道府県警で要員をあらかじめ確保しておくという。

警察庁は各種対策のための体制整備などを都道府県警に指示。装備資機材の整備費用を来年度当初予算案に盛り込む考えだ。(編集委員・吉田伸八)

大規模災害時の警察活動の対策の主な内容

(警察庁による)

《初動の情報収集・部隊展開》

・発災直後に被災地の警察から体感など生の声を警察庁に速報することを徹底

・資機材を積んで悪路を走れる四輪駆動車やチェーンソーなどの資機材を配備

《救助・捜索活動》

・救助部隊到着までの活動を担う地域警察官と消防団など地元の機関が連携した訓練の実施や共助関係の構築

・偽情報や誤情報に対応する体制を整備

《捜査・交通対策・防犯対策》

・無人の家を狙う窃盗など災害便乗犯罪に対する捜査体制を強化

・被災地へ到達するルートを解明する班を警察庁に設置

・避難所などへ防犯カメラを設置する部隊を新設

《被災地警察の支援》

・被災地で活動する警察職員の心身のケアを実施

・水を確保するため可搬型水再生処理プラントの導入を検討

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