福島県はいわき市小名浜などでカツオが揚がるが、福島では全国で上位に入るぐらいよくカツオを食べる。今年は脂が乗っていてすごくうまい。すり下ろしたばかりの臭いがガツンとくるにんにくをたっぷりつけて食う。あまりつけると母ちゃん(妻)に「くせっ」て言われるけど。この猛暑で毎日の現場作業は厳しいが、休みの日に鮮魚店に行ってカツオを切ってもらうのが楽しみになっている。

東京電力福島第1原発の現場では、今も平日で1日約4000人が働いている。猛暑の中のフル装備での作業は厳しい。

 原発事故後の13年余りはあっという間に過ぎた。ずっと何かに追われているような感じだった。この間、風呂場で鏡を見たら、白髪がすごいし、俺、年取ったなーと思った。事故後、新たな業者が大量に入ってきて、イチエフ(福島第1原発)で働き続けることができるか不安な時期もあった。でも避難でばらばらになった従業員も戻り、仕事もようやく安定してきた。若手も育ち、仕事を任せられるヤツもいて頼もしい。  あとは新たに人を入れたいが、これがなかなか難しい。今は手続きが大変で放射線教育以外にもいくつも講習があり、いろいろな書類もそろえなきゃならず、登録にはかなり時間がかかる。その間も会社が給料を出せればいいが厳しい。だから事前にいつから雇用となり、給料が出るのか説明してから来てもらう。  登録後、現場に出て数日で「辞めたい」って言ったやつもいたな。事故前に住んでいた地域の避難指示が解除されて、高齢の両親と戻ってきたというから、何とかしてやりたいと思った。働き盛りなのに「つらいんで」とか言うから、「来たばっかりだろう。頑張れよ」ってハッパかけたけど、サボってばかりで駄目だった。賠償金をもらっていたときは働かず、その後仕事についても短期で転々としていた。賠償金で生き方が狂っちゃったのかもしれない。賠償金なんて、いつか終わると分かっていたのに。  廃炉までは長い。根性のある若手に入ってきてほしい。(聞き手・片山夏子) 

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