近視と判定される子どもは小学校低学年で多く、小3時点で36%だったことが31日、文部科学省の近視実態調査で分かった。長時間のデジタル端末の使用などが視力低下に影響することも判明。文科省は屋外での活動が予防につながるとして、平日は1日90分、休日は同120分を目安に外で過ごすことを推奨している。

調査は2021〜23年度、9都道府県の29校の小中学生について調べた。3年間にわたって追跡できる約5200人については、経年変化も分析した。

21年度時点で小1だった児童の近視の割合は12%で、小3になると3倍の36%に上昇していた。同年度時点で小4だった児童では43%で、小6になると1.2倍の53%に上昇。中1から中3では、60%から61%でほぼ変わらなかった。

近視は目の角膜から網膜までの長さ(眼軸長)が延びることで起きるとされる。近視に詳しい筑波大の平岡孝浩准教授は「小学校低学年は成長期で眼軸長が延びやすく、近視を発症する児童が多い」と説明する。近視になると緑内障や網膜剥離などの目の病気のリスクを高める恐れもあるという。

裸眼視力は学年が上がるほど悪化していた。教室の最前列に座っても黒板の文字が見えにくいとされる裸眼視力0.3未満の割合は、小1では男女ともに1%。中3では男子29%、女子36%を占めた。

デジタル機器の使用の影響についても分析。平日に学校以外でパソコンやタブレット端末を使用する平均時間が120分以上の児童生徒は、30分未満の児童生徒に比べて、視力が低下しやすい傾向があった。

一方で授業や学校の休み時間以外で屋外で過ごす時間が1日90分以上から120分未満の場合は、30分未満に比べて視力低下のリスクが低かった。

京都大学大学院医学研究科が24年6月に発表した研究でも、屋外活動の時間を増やす取り組みを行った学校では、そうでない学校の児童に比べて近視の割合が1年後で2ポイント、2年後で4ポイント、3年後では9ポイント低くなっていた。

屋外活動の効果について詳細は判明していないが、平岡准教授は「太陽光が眼軸長の成長の抑制につながるのではないかという仮説がある」と話す。

子どもの近視や視力低下は世界各地で課題になっている。平岡准教授によると、台湾では毎日2時間外で過ごすことを求めている。中国やシンガポールも国が主導して予防策に取り組んでいるという。

文科省は今回の調査結果を踏まえ、「熱中症などに配慮したうえで、平日は1日90分以上、休日は1日120分以上を屋外で過ごしてほしい」と呼びかけている。

(森紗良)

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