東京都内で定点医療機関から報告される手足口病の患者数が、6週連続で警報レベルに達している。発熱や発疹を伴う感染症で、5歳以下の乳幼児を中心に夏に流行する傾向にあり、今年は異例の患者数となっている。大人が感染すると食事や歩行が困難になるケースもあり、都や医師は家庭での感染対策を呼びかけている。(原田遼)

◆ワクチンなし、対症療法だけ

 都内264の小児科での定点報告の集計で、7月15~21日(第29週)の手足口病患者は1医療機関当たり13.94人。前週の16.39人から下がったが、警報の指標となる5人を大きく上回っている。全国的にも同様で、5月から増え始め、国立感染症研究所は週ごとの比較で「過去10年で最多」としている。

手足口病に感染した都内の女性の足裏=本人提供

 ワクチンや特別な治療法はなく、対症療法のみ。発疹は1週間程度で消えるが、まれに急性脳炎や心筋炎を併発して重症化する。アルコールで消毒できず、保育所などで広まりやすい。

◆発疹が消えてもウイルス排せつ

 東京都港区の小児科「クリニック ばんびぃに」の時田章史院長は「久々の大流行を実感している。口の中に発疹ができると、痛みで飲食が難しくなる。当院では週に1人くらい、脱水症状などで点滴や入院が必要な子が来る」と警戒を呼びかける。  都保健医療局は「定点報告は小児科だけが対象で、大人の感染状況は把握できていない。一定程度、大人にもうつる」とし「発疹が消えた後も2~4週間は便からウイルスが排せつされる。手洗いを徹底し、タオルの共有を避けてほしい」と求めている。

 手足口病 コクサッキーA群などのウイルスが飛沫(ひまつ)や唾液、便を通じて感染する。口内の粘膜や手のひら、足の甲や裏などに水疱(すいほう)性の発疹が出る。感染者の3分の1程度が発熱する。例年夏に流行し、乳幼児が多く感染する。せきやくしゃみなどのほか、手に付いたウイルスが口に入ることからも広がる。1週間ほどで治ることが多いが、まれに重症化する。

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◆家庭内の対策をやるべきだった

 「足の裏全体にとげが刺さった感じ。ペンギンのようによちよち歩きしかできなかった」。都内の女性会社員(38)が手足口病のつらさを振り返る。  今月中旬、5歳の長男が発熱した4日後、自分も39度を超える熱が出た。翌日に下がると、手足の数十カ所に発疹が広がり、手足口病と診断された。長男は当初、小児科で風邪と診断され、受診後に足裏に発疹ができた。「長男の発疹を水虫だと思っていたが、今思えば手足口病だったのだろう。家庭内での感染対策をしっかりやるべきだった」と悔やむ。

◆時間差で症状「痛みのフルコース」

 手足口病は発熱後、時間を置いて発疹が出ることもあり、診断が難しいとされる。都内の主婦(44)も今月、小学生の娘が夏風邪と診断され、看病していると数日後、自身に39度の熱と、のどや手足に発疹が出た。「のどの痛みがつらかった。野菜ジュースを飲んだら、とてつもなく痛かった。発疹がなくなったら複数の口内炎ができて、痛みのフルコースだった」  「目黒の大鳥神社前クリニック」の北村直人院長は「大人の受診は例年より多い。主に子どもから感染している」と話す。家庭で対策をしたくても、乳幼児のマスク着用や隔離は難しい。北村院長は「大人も体力が落ちると感染しやすい。手洗いなど基本的な対策に加え、十分な睡眠と食事をとりながら子どもの看病をしてほしい」と語った。 

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