原子力規制委員会の審査チームの会合で26日、再稼働できない公算が大きくなった日本原子力発電(原電)の敦賀原発2号機(福井県)。原電は審査に必要な資料を用意する初歩からつまずき、ようやく始められた審査では、科学的に根拠ある説明ができなかった。再稼働に向けた申請からまもなく9年。各地で原発推進の圧力が高まる中、なし崩しの再稼働に一定の歯止めがかかった。(渡辺聖子)

◆審査に関する「検査」までする事態に

 「審査に関する『検査』までしなければならない事態に陥った異常な審査」
 
 規制委の山中伸介委員長は、24日の会見で原電とのやりとりを振り返った。

日本原子力発電敦賀原発2号機について議論する原子力規制委員会の審査チームの会合

 原電は2015年、再稼働に向けた審査を規制委に申請し、すぐに迷走を始める。審査資料の誤記が千カ所以上見つかった上、20年には地質データの書き換えが80カ所発覚した。

◆本店に立ち入り検査も

 活断層かどうかを判断する重要な地点のボーリングで取り出した地層の状態を活断層の可能性につながる「未固結」から、可能性の否定になる「固結」に書き換えるなどしていた。
 規制委は原電本店(東京都台東区)に対し異例の検査にも入った。山中委員長が言及した「検査」とは、この一連の確認作業のことだ。書き換えは、原電に有利になると捉えられたが、故意はないとの結論になった。ただ、その後も資料の誤りが相次ぎ見つかった。

◆「これが最後」通告突き付けられても

 23年4月には、原電の村松衛社長が規制委の会合に出席し「重く受け止めている。申し訳ない」と陳謝。山中委員長は「これが最後というつもりで、しっかり臨んでいただきたい」と最後通告を突き付けた。不祥事の背景には人材不足が指摘され、審査途中で関西電力や中部電力などから幹部の派遣を受けた。
 それにもかかわらず、26日の会合で新規制基準に適合しないと結論付けられた。原電は追加調査を求め、徹底抗戦の構えを見せた。  最後通告を受けていた審査の焦点は、2号機から約300メートル先にある「K断層」の評価だった。論点はK断層が(1)活断層なのか(活動性)(2)原子炉直下まで延びているのか(連続性)―に絞られた。

◆活断層につながるうっかり説明

 活断層は、断層が動いた時期がポイント。新規制基準では、活断層の定義は12万~13万年前の後期更新世以降の新しい時代に動いた可能性があるものだ。  原電は、K断層を覆う地層の堆積年代を火山灰や花粉の分析から特定することで、活断層ではないと主張。だが、堆積状況が複雑すぎたため曖昧な説明に終始し、根拠とならなかった。  しかも、かつて動いた形跡があるK断層を含む地層の堆積年代を「12万4000~14万2000年前より古い」と説明したことが墓穴を掘った。この堆積年代は後期更新世にかかっている。後期更新世以降に動いた活断層の可能性もある。審査チームは「活動性は否定できない」との結論を導いた。

◆断層の特徴見逃さず

K断層が原子炉方向へ延びているのかを調べるため、原電はK断層と建屋間で14カ所を掘削し調査。その結果、「K断層と同じ性状の断層はなく、切れている」と説明した。原電は自ら作った判断基準に沿い評価し、連続性を否定できると主張した。  これに、審査チームは、調査結果の一部にK断層の特徴と似た断層があることを見逃さなかった。さらに、原電の判断基準について「K断層の特徴を踏まえておらず、判断に使えるか分からない」と指摘し、原電のストーリーを崩した。 

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