傷害致死などの罪に問われ、一審で懲役12年の判決を受けて控訴していた被告が26日、大阪拘置所から保釈された。長期の実刑判決が出た事件で保釈が認められるのは異例。大阪高裁は今年5月に始まったばかりの「監督者制度」も保釈条件に入れた。同制度の適用は初めてとみられる。

  • 一審で長期実刑、無罪主張の被告が異例の保釈へ 5月の新制度を適用

 保釈されたのは今西貴大被告(35)。2017年12月、当時2歳の養女の頭部に何らかの方法で衝撃を与えて死亡させたなどとして逮捕・起訴された。病死などの可能性を指摘して無罪を主張したが、一審・大阪地裁の裁判員裁判は21年3月に被告の犯行と認定。控訴審も8人の専門家が証人出廷するなどして全面的に争われ、今年5月に結審した。11月に判決がある。

 弁護側は高裁で結審後、11回目の保釈請求をした。被告がGPS端末を身に着けることや、住居の玄関先に監視カメラを付けるといった条件を提案すると、高裁(石川恭司裁判長)は「監督者」を選任するよう打診した。

 法的責任はない「身元引受人」と違い、監督者は監督保証金を納め、公判への同行や状況報告などの義務を負う。5月に始まった制度だ。

 高裁は被告の母親を面談の上で今月23日に監督者とし、保釈を決めた。検察の異議を受けて審理した高裁の別の裁判体(飯島健太郎裁判長)も26日、判断を追認した。

 弁護人の川崎拓也弁護士は会見を開き、「もっと早く保釈されるべきだったが、判断には敬意を表したい」と評価。監督者制度については「保釈条件に入った例は聞いたことがない」とし、「人質司法からの脱却に向けて活用されるのであれば望ましい」と話した。

 最高裁は制度の適用事例について「把握していない」としている。

 5年余り拘束が続いた被告は弁護人を通じ、「保釈決定が出たことを知ったとき、うれしくて涙が出ました。人質司法の生存者として、体験は語り継いでいきたい」との談話を出した。

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