能登半島地震からの復旧を目指し、石川・奥能登地域の市町が全国の自治体に応援職員の派遣を依頼しているが、要望は満たされていない。特に、これから本格化する公費解体の事務を担う職員の不足は深刻だ。

公費解体の受け付けをする職員たち=石川県輪島市役所で

◆中長期派遣職員は2割 公費解体担当は4割足りず

 輪島、珠洲、穴水、能登の4市町は県や総務省などを通じて1年程度、派遣先の市町で業務に就く「中長期派遣職員」計241人を希望したが、7月1日現在で着任したのは188人。公費解体を担う職員は54人の希望に対し、着任したのは31人にとどまった。  「早い復興のために公費解体を急ぎたいが、職員が足りない。もたもたしていると、町から人が出ていってしまう」。能登町で公費解体を担当する職員は、危機感を口にする。10人の派遣を希望したが、7月1日現在で着任したのは4人。公費解体を望む町民の申請書類の確認のほか、解体の決定を被災者に知らせる書類の発行などに支障が出ることを懸念している。解体にかかった費用の一部を国に請求するための書類作りも膨大だという。  輪島市は20人の要望に対し、11人が着任した。珠洲市は18人に対して10人。穴水町は希望通り6人が派遣されたが、6月までは不足していた。全員がそろったのは7月1日だった。

◆前例が少なく「役に立たなかったら」

 公費解体を担う職員の派遣が少ない理由について、珠洲市の担当者は「前例の少ない仕事なので、派遣しづらいのでは」と推測する。公費解体の職員を派遣していない三重県のある自治体の担当者は「(公費解体は)資産税部門の仕事に近いと思うが、経験がない職員ができるかというと不安。役に立たなかったら、逆に迷惑をかける」と説明した。  総務省の担当者は「年度替わりのタイミングで、調整が難しかったのかもしれない。引き続き被災自治体とコミュニケーションを取り、希望に応えたい」と話した。(清水裕介) 

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